承認プロセスのリードタイム短縮を目指し、最近の開発プロジェクトでは、SlackやChatWorkをはじめとしたチャットツールが採用されることが増えてきました。しかし、チャットツール導入に失敗する企業が多いのも事実。その理由はどこにあるのでしょうか。
トヨタ生産方式でも利用されていた、プロセス可視化の手法「バリューストリームマッピング(Value Stream Mapping:以下VSM)」を使うと、どの企業でも課題に上がる項目があります。それが「承認プロセス」のリードタイムです。
新規機能を開発し、本番稼働しているアプリケーションを一刻も早く置き換えたいにもかかわらず、リリース判定の承認者が一日中会議に追われていてつかまらない――そんな経験はないでしょうか? プロジェクトマネジャーが、承認者の帰りを夜まで待った揚げ句、ミスが発覚してリリースが延期になってしまった、といった展開もよくある話です。
このように、開発プロセスに携わる社内のステークホルダーが、実はDevOpsを妨げているケースは往々にして存在します。
中でも、今回例に挙げた、異なるロールや部署間のコミュニケーションによるリードタイムは、どの企業にもある潜在的な課題の1つです。この課題に対する最も手っ取り早いアプローチは、ステージごとに用意された過剰なまでの承認プロセスを省くことですが、エンタープライズの現場においては、法律規制などの外的要因も含め、そう簡単にはプロセスを変えられないのが現実でしょう。
そうした状況を打破すべく、近年の迅速な開発プロジェクトでは、組織間のコラボレーションを促進するツールとして「チャットツール」が欠かせない存在になっています。「Slack」や「ChatWork」に代表されるチャットツールは、単なるコミュニケーションツールとしての役割を超え、システムやプロジェクトそのものを間接的に管理できるツールとして、エンタープライズ企業でも採用されつつあります。
特にDevOpsという視点では、エンジニアとビジネス間の意見を気軽に吸い上げ、コミュニケーションを円滑にするだけではなく、CI(継続的インテグレーション)ツールやチケット管理ツールと連携することで、即時にシステムに反映することができる役割も持ち合わせています。これにより、承認プロセスさえも会話の中で完結し、リードタイムを大幅に削減できるのです。
しかしながら、「ビジネスチャットツールを導入している企業は約3割」という調査結果も出ているように、このチャットツールを導入できていない現場や、うまく活用できていない現場も多いのではないでしょうか。これらの企業を見てみると、チャットツール導入(活用)に失敗する、共通の阻害要因があることが分かります。
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