実は既に、ESASYと同じような競合サービスも登場している。海外のソリューションでは「RetailNext」という会社があり、アメリカでは230社に導入実績があるという。また、日本では「ABEJA」というAI関連企業が同様のサービスを開始した。
ESASYを提供するクレストがRetailNextやABEJAと大きく異なるのは、内装や看板・ディスプレイの設計施工を通じて、既に多くの実店舗と接点があることだ。
「競合といわれるシステムは幾つかありますが、私たちの場合は看板・ディスプレイ施工という“アナログな仕事を通じた接点と知見の多さ”が違うところだと思います。私たちは約4000社と直接の取引があり、累積で5万店舗に設営や納品をしています。日本の小売店舗数は16万といわれているので、そのうちのおよそ30%に何らかの形で過去携わったことがあるわけです。今の課題は、『接点があるお客さまに、いかに属人的な意思決定からデータを活用をした経営の意義を伝えるか』ですね」(永井氏)
永井氏によればESASYは、2018年の初頭の時点で120台ほどの導入が進んでおり(国内実績)、海外からの問い合わせも増えているという。こうした中、現在の最重要課題は、店舗経営層や現場スタッフに、データの重要性を理解してもらうことだという。
「店舗スタッフ向けのデータ分析トレーニングプログラムを考えなければなりません。リアル店舗は一店として同じものはなく、形状もカメラの位置も、お客さまの導線も全て違います。陳列を1つ変えるだけでもそれぞれの店舗で効果が異なるので、Web広告のような統一フォーマットにするのが難しいのです。そのため、導入企業ごとにカスタマイズされたコンサルティングができる人材への投資にも注力しています。例えば、もともとファッションブランドの経営をしていた人をコンサルタントとして採用し、そのコンサルタントにデータ分析を学んでもらうようなことを考えています」(永井氏)
難しいのが、ITに詳しい担当者をコンサルタントとして配置しても、実際の店舗運営やサービス業を知らないと何もできないところだと永井氏。今はまだまだ啓蒙し、導入企業とともに小売業そのものを可視化することをともに考えていく段階だという。
「大切なのはクイックウィンの体験をたくさんすることです。Google AnaryticsやSalesforceと一緒で、まずはスモールスタートで導入してもらって、“何人が店の前を通った、何人が見た、見られた商品が売れた”という小さな成功体験を感じてもらうことです。こうした数字を日々見続けていると、次第にスタッフ自らが研究したいと考え始めるんですね。私たちは、『カメラの位置はこうしたほうがいい』『POSデータとつなげるとこうなる』といったアドバイスをし続けるつもりではいますが、最終的には導入企業のみなさんが自分のビジネスに合わせた導入スタイルを考えたほうがいいと思っています。私たちが将来的に目指すのはコンサル業ではなく、データのプラットフォーマーなのです」(永井氏)
後編では、永井社長のレガシーマーケットの変革に向けた意気込みを聞く。
【聞き手:後藤祥子、大内孝子】
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