りんなは、感情のつながりを重視する対話型AIであり、次々と会話をつなげるやりとりが得意だ。それに対して、入力した情報に対し正解を出力するアシスタント型AIとして、Microsoftには「Cortana」がある。
Cortanaは、「Windows 10」を搭載したPCで利用できるほか、サードパーティーに提供されており、AIスピーカーにも利用されている。Cortanaを搭載したAIスピーカーは、ハーマン・カードン(Harman/Kardon)の「Harman Kardon Invoke」のほか、HPやLenovoが開発を進めている。
日本マイクロソフトの執行役員 最高技術責任者であり、2018年2月から、マイクロソフト ディベロップメントの社長に就任した榊原彰氏は、Cortanaを「IQ型AI」と表現し、りんなやXiaoiceを「EQ型AI」と表現。「これは全く別のAIである。Microsoftでは、IQ型とEQ型の2つのAIに取り組むことで、IQ型で人の仕事を助けるだけでなく、EQ型で人の感情に寄り添うAIの開発を進めてきた」とする。
IQ(intelligence quotient)は多くの人が知るように、人の知能を数値化した、いわゆる知能指数を示す。だが、EQ(Emotional Intelligence Quotient)は、心の知能指数といわれるように、感情に関する理解などの能力を示すものとなる。
「効率的に役に立つことも必要だが、エモーショナルなところにフォーカスしたAIも必要。りんなは、感情のつながりを重視することができるAIとして進化させてきた。このニーズはますます高まっていくだろう」(榊原氏)
Microsoftのアジア地域担当コーポレートバイスプレジデントであるラルフ・ハウプター氏は、「2018年は AIの年」と位置付け、「一般向けとビジネス向けの両方のシナリオで、チャットbot形態の広範なAIの採用が進んでいくことが予想される。Gartnerは、2020年までに企業と顧客の対話の85%が人間の介在なしに行われるようになり、顧客サービスにおいてAIが重要テクノロジーとなると予測している」と指摘した。
今後、AIがコミュニケーションのあらゆるシーンで利用されるなかで、IQ型AIとEQ型AIが適材適所で利用されていくことになるだろう。
榊原氏は、「現在のAIスピーカーに利用されているのはIQ型AIであり、AIが適切な回答をもたらすものになる。だが、今後、AIスピーカーの用途が広がるようになると、そこにはEQ型AIが使われるといったことも始まるだろう」と予測する。
Microsoftでは、AIスピーカーを直接製品化することはないとするが、ハードウェアベンダーとの連動で、りんなの技術を搭載したAIスピーカーが登場するといった時代がやってくるかもしれない。
IQ型AIとEQ型AIの適材適所での利用が、人とAIの距離を縮めることになりそうだ。
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