ゼロからIT部門を作り直した――急成長する不動産企業「オープンハウス」の舞台裏【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜(1/4 ページ)

都心の戸建て住宅というビジネスがヒットし、急成長する不動産企業の「オープンハウス」。その裏にはIT活用の進化もあるようだ。PCのお守りしかしていなかったというIT部門が、先端ITを使いこなす内製部隊に生まれ変わった背景を追った。

» 2018年02月26日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 「都心にマイホーム」。一昔前ならば“高根の花”とされていた好立地の一軒家だが、最近では状況が変わりつつあるという。1987年に建築基準法が改正されて以降、木造三階建て住宅を建設する自由度が高まったことから、手ごろな価格帯の戸建て住宅が増えているという。

 こうした背景から、昨今大きく業績を伸ばしているのが、1997年に設立したオープンハウスだ。5期連続で過去最高の売上高と利益を更新し続け、最新の2017年9月期でも、前年比で20%以上の成長を遂げている。

 従来、敬遠されがちだった狭小地や、いびつな土地などに目を付けた戦略が奏功したのもあるが、この急成長の裏には、IT活用の進化もあるようだ。同社最高情報責任者(CIO)の田口慶二氏はこう話す。「ビジネスとしては不動産企業ですが、実際にやっていることはもうゴリゴリのIT企業だと思っています」

photo オープンハウスは、5期連続で過去最高の売上高と利益を更新するなど急成長を遂げている

ゼロベースでIT部門を“再”立ち上げ、30人の組織に

photo オープンハウス 最高情報責任者(CIO)田口慶二氏

 田口氏がオープンハウスに入社したのは2014年のこと。それまではNTTや日本ベリサイン、イオンなどさまざまな企業を渡り歩き、EC基盤開発やマーケティング、新規事業開発などを手掛けてきたという。入社当時、オープンハウスのIT部門は「PCのお守りをしていたくらいだった」と田口氏は振り返る。

 「当時、IT部門は5人もいないくらいで、そこからメンバーやチームビルディング、マネジメントまで全てを変えました。もうスクラッチでIT部門を作ったようなイメージです。企業の成長を考えたときに、『このままのIT部門では、経営が目指す売り上げを達成できない』という問題意識があり、ゼロベースで作るしかないという考えに至りました」(田口氏)

 生まれ変わったIT部門では、iPhoneやG Suiteによる業務改革や、基幹系システムのクラウド移行、グループ全体ネットワークの刷新などを行ってきた。今では日本ではグループ全体で約10人、オフショアのプログラマーが約20人と、合計30人くらいの組織になり、スピードを重視するため、システムは全て内製で開発しているという。それでも、同社のIT投資額は「一般的な一部上場企業に比べると1/5程度であり、売上対比でも非常に少ない」(田口氏)とのことで、今後も積極的に投資を増やしていく考えだ。

 迅速な内製開発を進めるには、エンジニアの事業理解が深いことも不可欠だ。その点を田口氏は重要視しているという。

 「基本的に『事業が分からなければ、IT部門に来るな』と言っています。あくまでもITは手段の1つにすぎません。何らかの経営課題を解決するときに“安い、うまい、早い”といったITのメリットを発揮できるポイントで使うことが大切なのです。内製開発ではコンセプトメイクやProof of Concept(PoC)が非常に重要なので、不動産のビジネスモデルや現場で起きている課題を真摯(しんし)に受け止め、理解できることが前提条件となります。

 エンジニアには外国籍のスタッフもいますが、日本ならではの文化や風土もしっかりと伝えます。それを理解していないと、ボタンを掛け違ったアウトプットができ上がる。IT部門の人たちの給料は、営業の仕事から生まれています。だからこそ、傲慢にならずにアウトプットで結果を出していく。米MIT Media Lab所長の伊藤穣一氏が言った“Deploy or Die(とにかく作れ)”という言葉はよく使っています」(田口氏)

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