さて、先ほどのハイプサイクルとともに、ガートナーの評価指標で注目されるのが「マジック・クアドラント」だ。日本におけるクラウドIaaSのその最新状況を示したのが図3である。この図は、日本におけるIaaSベンダーの勢力図をひと目で分かるように示したものである。同社が日本のIaaSベンダーを対象にしたマジック・クアドラントを公開したのは2017年が初めてだ。先述した1年前のコラムに掲載しているので、ぜひ最新版と見比べていただきたい。
また、マジッック・クアドラントの見方については、2年前に亦賀氏が同じテーマで講演した内容を取り上げた2016年8月15日掲載の本コラム「クラウドサービス市場の覇者は? 最新勢力図を検証する」に詳しく説明しているので参考にしていただきたい。このほか、同氏のクラウドにおける洞察や分析をもっと知りたい方は、2016年5月2日掲載の本コラム「業務システムのクラウド化、成功のカギは『松・竹・梅』の見極めにあり」、2015年6月1日掲載の本コラム「あらためて問う『クラウドの本質的なメリット』」も参照していただきたい。
今回の講演内容に話を戻すと、筆者が最も印象深かったのは、亦賀氏の冒頭の発言における「問題はどう使うか」に対しての見解である。同氏はその前段として、クラウドは、既存システムを移行する「モード1」と、AIやIoTなどの最新技術を活用して新たなデジタルビジネスを推進する「モード2」のバイモーダルで捉える必要があると説明した。いわば、前者が「クラウドシフト」、後者が「クラウドファースト」である。
だが、同氏は「この1年、米国ではモード2に向けた動きがものすごい勢いになっており、モード1でちゅうちょしていると取り残される状況が明らかになってきた。しかも今後の市場においても、飛躍的に伸びるのはモード2で、モード1は縮小していくとの見方が、米国では大勢を占めるようになってきている。この動きは、日本企業もいち早く察知する必要があるのではないか」との見解を示した。
とはいえ、モード1を手掛けないという話ではない。同氏は次世代クラウド戦略立案の例として図4を示した。図中の言葉の説明をしておくと、先述したクラウドの運転技術が「運転」、モード1が「M1」、モード2が「M2」、そして「松」が99.999%、「竹」が99.99%、「梅」が99.9%を表すサービスレベル契約(SLA)の水準である。
亦賀氏は図4を示しながら、「やるべきことが多いので、できることから着実に進めていくのが大事」と述べたが、その一方で「日本企業はモード2のインパクトを理解する必要がある」と重ねて強調した。同氏のこのメッセージを、筆者もユーザーおよびSIerに強く発信したい。
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