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» 2018年05月28日 07時00分 公開

請負型マインドからの「脱出」――DMM.comラボの情シスがスクラム開発に挑戦した理由(2/3 ページ)

[高橋睦美,ITmedia]

社内サービスの開発に「スクラム」を採用した理由

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 DMM.comグループにとっての顧客がインターネットユーザー全般ならば、DMM.comラボ 情報システム部にとっての顧客は、約3000人に上る同社グループの従業員だ。グループとして、「エンターテインメントサービスを通じて顧客を幸せにしていく」のと同じように、情報システム部でも「提供するサービスを通じて従業員の生産性を向上させ、幸せにしていこう」という目標を掲げ、さまざまなシステムを自社内で開発しようとしている。

 社内の人に喜んでもらえるシステムを開発するためには、情シス自らが“自分ごととして”課題に向き合い、現場の声に耳を傾けることが大事だが、これまでの情シス部門は、必ずしもそういう考え方ではなかったと岩崎氏は振り返る。

 「以前は旧態依然とした情報システム部で、上から降ってきた指示をベンダーと調整しながら形にして納品するという、受け身の組織でした」(岩崎氏)

 そんな部内の空気を変えるために導入しようと考えたのが、スクラム開発の手法だった。主体的にプロダクトオーナーシップや責任を持つというアプローチが効くのではないかと考えたのだ。もちろん、課題解決や新しいもの作りに適しているという点も考えた上での判断だ。

 おりしもDMM.comグループでは、社内ポータルサイトの構築が急務となっていた。次々と企業が統合し、急速に成長したDMM.comグループでは、業務の遂行に必要な複数のシステムが入り乱れ、必要な情報がどこにあるかがすぐには分からないという問題が起こっていたのだ。岩崎氏は、このプロジェクトでスクラム開発を試そうと決めた。

 情報システム部門では、解決策としてZendeskを導入することを提案。さまざまな場所に分散していた情報を1つのポータル上に集約することを目指した。それと同時に、「パスワードを忘れた」「PCが壊れて作業できない」といった日常的に寄せられる問い合わせについて、ユーザーが自己解決できるよう支援するナレッジベースを確立することで、情報システム部門の負荷を減らすとともに、社員の「待ち時間」をなくし、全員の生産性向上につなげようと考えた。

請負的な対応からオーナーシップに基づく幅広い改善へ

Photo 情報システム部 IT開発グループのグループリーダーを務める金井淳氏

 スクラム開発は同社の情報システム部にとって、新たなチャレンジだった。導入に当たっては、別のプロジェクトでスクラム開発の経験がある金井淳氏(情報システム部 IT開発グループのグループリーダー)をオブザーバーに、若い情報システム部員やデザイナーなどで構成されるスクラムチームを発足。プロジェクトを立ち上げた。

 スクラムといえば、開発の方法論を解説する書籍やコンテンツが多数流通していることもあり、まずしっかりやり方を理解してから始めようと考える企業がほとんどだが、初めてスクラムに取り組むメンバーが多かったDMM.comラボでは、開発プロセスを学びながらプロジェクトを進めていったという。

 「『やってみよう』という思いを持ったメンバーに恵まれたと思います。納期がきっちり決まっているプロジェクトでは難しい、というスクラム開発のデメリットも出ませんでした。経験者がいなかったこともかえって幸いしたようで、メンバー同士が助け合いながら知識を吸収していきました」(金井氏)

 サービス開発に当たっては、まず、「最終的にどういったものを作りたいか」というゴールを話し合ってプロダクトバックログ(プロジェクトの完了までに必要となる全ての機能や要素に優先順位を付けたリスト)を書き出し、それを必要な工程ごとにスプリントバックログ(一定期間分のタスクリスト)に分解。スプリントバックログ一つ一つの工数を全員で見積もり、定期的なミーティングの中で進捗(しんちょく)や問題点を確認しながら実施に移し、必要に応じて修正していく。今回のプロジェクトも、おおむねその流れに沿って取り組んだという。

Photo 情報システム部 IT開発グループ スクラムマスターの松本幸加氏

 プロジェクトメンバーはこれまでウオーターフォール型の開発手法しか経験していなかったが、さほど不安はなかったと話す。スクラムマスターを務めた情報システム部 IT開発グループの松本幸加氏は、「新しい物好きで、やったことがないから楽しそうだと感じました。ちょこちょこと軌道修正をしながら、学びながら運用していったのが良かったのかなと思います」と振り返る。

 確かに、ゴールを共有し、工数を見積もるための最初のコミュニケーションにはコスト(負荷)がかかったというが、松本氏らは、「どういう状態になっていたいか」を誰にでも分かるように記述し、チケット化することで、「皆が同じ1つのミッションに向かう下地」さえ作ってしまえば、あとはアウトプットのイメージがブレない状態で開発を進めることができたという。

Photo 情報システム部 IT開発グループのエンジニア、塩見祐未子氏

 スクラム開発を取り入れたことで、情報システム部のカルチャーにも大きな変化があった。「メンバーそれぞれが守備範囲を広げていく機会になりました。何を、どのくらいの時間で、どのくらいの品質でやるかという共通認識ができると、たとえやったことがない分野の業務でも『自分にもできそう』と思えるようになって、手を出しやすくなりました」(金井氏)

 IT開発グループのエンジニア、塩見祐未子氏は「最初は『おおっ』って思いました。これまでのように、降ってきた依頼を請負的に対処するのではなく、1つのゴールに向けていろいろな観点から改善に取り組むことができ、今まで気付かなかった視点も得られて、幅が広がったと思います」と話す。

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