「え? “時限装置付き”って?」
メイが疑問を口に出した間に、潤とつたえが入って来た。
「遅いで! どこをほっつき歩いとったんや!」
虎舞の叱責が潤に飛ぶ。
「いや、一斉通報を見てランサムウェアだと思ったので、一刻も早く通信先をブロックしようと思って、作業していました」
「……何をした?」
志路が低い声で聞く。
「初報でもらった3つの通信先を、ファイアウォールでブロックしました」
「ばか野郎! 何を根拠に行動した? 『コールがかかったら、真っ先にここに集合』って言っているだろう! 勝手なことするな!」
志路が声を荒げた。
潤の後ろでつたえが青い顔をして震えている。
「すみません。俺の独断で行いました。すみません」
潤が深々と頭を下げている。
志路が応える。
「謝っているヒマはない。今の潤の話で全体の概要がおおよそ分かった。おい、深淵、感染源は推測できたか?」
テレビ会議越しに深淵が答える。
「分かりました。メールです。被害に遭った12台が、同じメールを受信しています。メールのタイトルは、『一時金の支給額割合の変更について』。本文中に『資格別の変更表』というPDFファイルが添付されていました」
志路が宣託に言う。
「社内一斉通報と掲示板で、同様のメールに注意を促すメッセージを出すよう、総務に言ってくれ。これからも同じファイルを開くやつがいるかもしれない」
宣託は総務部へと走った。
メイが指示する。
「潤、暫定策として、メールシステム経由でこのメールを排除し、再発防止のメールブロックができるかどうか、システム運用部門に行って確認して。(深淵)大武、被害端末の数はさっきの12台から増えてる?」
「増えてない。共有ファイルサーバへの影響も一部のフォルダだけだ。共有ファイルサーバ内にウイルスはない」
深淵はぶっきらぼうに答える。
「見極さん、他に考えられることはある?」
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