プラットフォーマーの立場から世界の美容業界にイノベーションを――アイスタイルの取締役兼CFO 菅原敬氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(4/4 ページ)

» 2018年09月28日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
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プラットフォーマーの立場から化粧品業界を変えたい

長谷川: もし、花王さんとか資生堂さんとかに「役員待遇で来てくれ」って言われたら行きますか?

菅原: いやー、そんなお誘いないだろうし、ありがたいお話しながら行きませんね。

長谷川: どうしてです?

菅原: 青臭いですけど、世界の化粧品業界を変えようと思ってるから。1社に行ったら僕ができることがすごく小さくなっちゃうんですよね。中にいると変えられないことってたくさんあるんですよ。アイスタイルは業界の一員ではあるけれど、メーカーではなく、プラットフォーマーだからこそ変えられることがあると思っているので。

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長谷川: 一方で、大手が変わることでそれがデファクトになって業界に波及していくということもあるんじゃないですか?

菅原: 僕らのデータベースを見る限り、日本には化粧品メーカーが2万社あるんですよ。すごく分散してるんですよね。日本で資生堂がトップだといっても、マーケットシェアは10%台なんです。だから1社が変わっても、他が付いてこなければ、変わらないですよ。

長谷川: なるほど。

 菅原さんは今、投資会社の仕事もやってますよね。こういう業界、会社、あるいはこういう経営者に投資したいというのを教えてもらえますか?

菅原: どの産業領域とかは、特にないですね。もうインターネットは当たり前のものになって、その中だけで新しいことってもうそんなにはないんじゃないかと思うから、インターネットをうまく使いながらリアルの世界をどう変えていくかというのが、面白いと思いますよ。

 30代、40代の経営者で、B2Bビジネスができる、リアルを巻き込んだ業界破壊型のベンチャーがあるとムズムズしてきます。

長谷川: ほぅ。なるほど〜。

菅原: うちの会社は、業界特化型でバリューチェーン構造をどう組み替えるか、その中にどんなサービスを入れることで業界がうまく回るかみたいな事業のポジショニングをしてきたところがあるので、バリューチェーンの転換ポイントを作ってくれるような会社はけっこう好きですね。結局、うちの会社と思想が似てる会社が好きということですけど。

 逆に、CFOにファイナンスを任せるようなCEOは、お金を集めるべきじゃないと思っています。社長自身が「死んでもお金を集めたい」と思っていないようなところ、「これはCFOにの仕事だから」なんて言っているところに投資してもうまくいきっこないですよ。

長谷川: ベンチャーの社長って、必ずしもファイナンスが得意じゃないという場合もありますよね。

菅原: 得意かどうかじゃないんですよ。どれだけ会社のサステナビリティに責任を持つかという話なので。だってリスクマネーを預けるんですよ。僕らも外部の投資家からお金を預かってファンドマネジャーの役割をしているので、リターンを返さなきゃいけないんですからね。覚悟のない会社には投資したくないですよ。

 長谷川さんだって、外から東急ハンズにやってきて「誰だコイツ」という目で見られながらも、歯を食いしばって実績出して、それを続けてきたから今につながっているわけじゃないですか。ベンチャー投資も一緒ですよ。

「IT酒場放浪記」スタートの裏には菅原さんとの出会いがあった

長谷川: 菅原さん、今日いいこと言うてますな? いつもはね、しょうもない話半分になっちゃうんですけど。

菅原: いや、けっこう仕事の話多いじゃないですか。僕らで話すと仕事と家庭の話かな。

長谷川: まあ、そうですね。僕、EC担当になった時にたまたまアクセンチュアのEC勉強会があって、そこで菅原さんに出会ったんですね。その時は本当に何も分からなかったから、「いろいろ教えてください」と菅原さんのところに行ったら、収益構造から何から何まで教えてくれて、すごくありがたかったんですよ。あと、「こういう会がある」「こんな人がいる」と、めっちゃいろんな人を紹介してもらって。菅原さんには、大変、お世話になりました。

菅原: それはね、要は飲み会に誘ったということですよね(笑)。毎週のように一緒に飲みましたよね。

長谷川: そうです。情シス業界ってそんなに社外の横のつながりがなかったですから、ECをやるようになって初めて、外の人としゃべるって、こんなに楽しくって、勉強になって、それにこんなにエネルギッシュな人がいるんだ、ということを感じてね。

 最初に菅原さんに連れ回されていろいろな人に紹介してもらったというのが、この「IT酒場放浪記」を含め、今の社外活動の起源なんですよ。

菅原: そうだったんだ。僕も最初はEC業界分かんなくて、いろんな人に教えてもらったから、「ペイ・フォワード」ですよね。

長谷川: そうですね。今まで言ったことなかったですけど、菅原さんにはすごく恩義を感じているんです。これからもよろしくお願いします。今日は、ありがとうございました!

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ハンズラボ CEO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。


取材・執筆:やつづかえり

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