プラットフォーマーの立場から世界の美容業界にイノベーションを――アイスタイルの取締役兼CFO 菅原敬氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(2/4 ページ)

» 2018年09月28日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

実はアイスタイルに向いているエンタープライズ系エンジニア

長谷川: 今は開発のメンバーが何人くらいですか?

菅原: 150人くらいで、そのうち技術派遣や常駐業務委託が5割弱。技術派遣や常駐業務委託といっても、昔みたいに外に丸投げではなくて、オフィスに常駐してもらって、経費もうちがコントロールしているという形ですね。

長谷川: それはいいですね。150人で「@cosme」のサイトとかアプリを作ってるんですね。

菅原: ECとか、バックエンドの広告配信システムとか、何から何までやってますよ。社内の情シスも10人くらいいます。

長谷川: なるほどね。アイスタイルに中途で入るエンジニアはどういうところから来る人が多いですか?

菅原: 受託開発の会社よりはサービス運営会社のエンジニアが多いです。でも、SIerからの転職も、フリーランスの受託エンジニアも、絶賛大募集中ですよ。

長谷川: そうなんですね。ハンズラボも募集中です!

 エンジニアって、エンタープライズ系の、要するに帳票ばかり作らされている人と、ネット系のサービスを作っている人とで大きく分かれていて、後者の方はそれなりに楽しくワイワイやっている感じがするんです。僕はもともとはエンタープライズ系の人間なので、そっちの世界の人が御社みたいなところにどんどん転職したらいいのにな、と思うんですけどね。

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菅原: エンタープライズのミッションクリティカルなシステムをやった経験のある、責任感のある人間というのは、うちではすごく価値のある存在だと思いますよ。

 というのは、@cosmeはだいたい1400万人の方(2015年時点)に毎月使っていただいているんです。年齢別でいうと、20代の日本人女性の80%位、30代の70%弱が毎月1回以上は使ってくれているんですね。それだけ社会インフラとしても貴重だし、われわれの収益源でもあるので、ゼロベースで「こんな面白いアプリ作ろう」みたいなやり方はないわけですよ。

 僕らは“美容×IT”でこの先10年、20年ずっと突き進む戦略が決まっています。一応アジャイルで開発しているので、事業部側のディレクターとプランナーとデザイナーと一緒にやっていく中で、エンジニアにも「こういう画面遷移にすればユーザビリティも上がるよ」みたいなことは言ってもらいたい。アジャイルらしい関知はしてほしいんだけども、言葉は悪いですけど、単に「新しいサービスをつくりたいんですよ」みたいなWebプランナー上がりのデータベースのことが分からない人には、うちの会社でのエンジニアプロデュースはちょっと重すぎるかなと思いますね。

長谷川: 今の話を聞いただけで勝手なイメージで言いますけど、エンタープライズ系の人が転職する先として、メルカリに行くんだったら、アイスタイルさん行った方がいいんじゃないかと思いましたね。

菅原: ハイキタ!(メルカリは大好きです!)

長谷川: やっぱりね、エンタープライズ出身だと、Web系に行きたいんだけど、「何かみんな“Tシャツ&Gパン”系で、俺ムリかな?」とか、ちょっと思っている人もいるかもしれないですから。そういう人には、アイスタイルさんが合うかもしれないですよね。別にメルカリさんが悪いとか、決してそういうことじゃなくて。

菅原: うちもエンジニアは“Tシャツ&Gパン”だけど、事業部側とデザイナーも合わせたら200人くらいが同時にモノづくりをしているんですよ。しかも、かなりのユーザー数を抱えているということで、社会的責任も重い。

 そうすると、そのダイナミクスをコントロールするプロトコルはある程度必要で、例えばバージョン管理をどうしていくのかとか、コードの記述やコメントのルールをどうするのかとか、エンジニアの会話を聞いていると、そういうところはすごい意識し合っているんですね。

 そういう最低限のプロトコルというか、機密は守りつつ、同時にそれに従って待っているようなエンジニアだけじゃ困るんです。うちの会社にいる限りは、Webエンジニアとしてスキルアップが必要で、新しい言語とかフレームワークも使います。エンジニア同士の切磋琢磨も個人個人の学びも必要です。

 あとは、エンジニアとして言うべきことを言うこと。要は非エンジニアの開発メンバーが分からないことがあれば、エンジニアとしてちゃんと説明するという文化も必要なんです。そういう意味で、いわゆるスタートアップのかなり自由な、「取りあえずみんなワイワイ作ろうぜ」ではない、ハイブリッドな感じがうちの会社なのかなという感じしますね。CTOが聞いたら、「全然違う!」って言うかもしれないけど(笑)

長谷川: 菅原さんは今CFOですよね。今日こんなにシステム開発の話が出て、読者はびっくりすると思います(笑)

菅原: CFOといっても、管理系は見ていないCFO。僕、新規事業ばかりやってるんですよ。

長谷川: 菅原さんて、スーパージェネラリストですよね。どうしてですか? 普通は、これが得意とか、こういう領域は興味ないとかあると思うんですけど。

菅原: うーん、僕らはコンサルタントだったときに、「このプロジェクトは嫌だから、こっちやりたい」とかってないじゃないですか。それと同じなんですよね。その時々で会社に必要でやってくれと言われることをやってきたんです。

 今やっている新しい投資チームは、やるんだったら中途半端じゃなくて、ちゃんとやりたいと思ったから、外部からバリバリのプロに集まってもらってわがままを聞いてもらい、ファンドにはアイスタイルから10%の出資は受けているけれど、残りは外から調達して始めたんですけどね。

@cosmeに販売店情報が追加されたことでできるようになること

長谷川: さっき@cosmeのユーザー数がかなり多いという話がありましたけど、東急ハンズの店員が持つ「iPod touch」にも、@cosmeのアプリを入れてるんですよ。全店舗の従業員にアンケートを取ったら「@cosmeのアプリを入れて欲しい」と。お客さんが@cosmeを見て「この商品欲しい」と聞いてくるから、これで勉強しておかないとお客さんと会話できないんですね。

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菅原: 東急ハンズには「ハンズビー」という小型の店舗があって、そこで扱っているのは恐らく6割位は化粧品とか美容に関わるものなんですよね。

 ハンズさんに1つ相談があるんですけどね、これまで@cosmeのデータベースというのは、ユーザー情報があって、商品情報があって、「1対N」で商品レビューのデータが下がっているという構造だったんですが、ここ3年ぐらいかけて、商品情報にもう1つ別のデータ群を追加したんですよ。それは、この商品がどこで売られているかという「販売店情報」。

 それによって、どの商品がどこで売られているというお店マップが作れると同時に、お店ページも作れるので、コスメ版の「ぐるなび」が作れるんです。そこを「月額固定課金でプロモーションしてください」というサービスを始めようと思っていまして、ハンズさんでパイロット導入、いかがでしょうか?

長谷川: 全然いいですよ! 1個だけポイントがあって、「この商品はその店で取り寄せできるかどうか」ということが、マスター情報でもいいのでシステム同期できるんだったらやりたいなと思います。

菅原: ちょっと1回話しさせてください。

長谷川: ぜひ。化粧品の「ぐるなび」ね、なるほどね!

菅原: うちは、クライアントから広告料をいただいてプロモーション活動にご協力はしますが、ランキングについてはあくまで公正中立というポリシーを貫いているので、結果的にランキングの上位に聞いたことがないメーカーのものが上がることもあるわけですよ。

 で、「この商品ってどこで買えるの?」というユーザーの問い合わせがすごく多いんです。地方だと、「もしかしたら駅前のパルコにあるかもしれないけど、通勤経路的になかなか行かないし」みたいな人が@cosmeを見て、例えば「駅前のパルコだったら売っている」と分かったら、パルコに寄るわけですよ。「どこで何が売られているという情報がほしい」という声がすごく多くて、今、販売店情報をコツコツためているところなんです。

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