変化の時代を生き抜くために欠かせない“3つのP”とは SAPジャパン社長が語る企業変革のアプローチWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2018年12月03日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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日本法人の中期事業計画策定にみる「3つのP」実践例

 SAPは2004年にデザイン思考をソフトウェア開発や自社のビジネスに取り入れ、2012年からは顧客との“共創”プロジェクトを推進する手段として適用している。

 さらに、福田氏はデザイン思考をはじめとした「3つのP」の実践例として、2018年9月に実施したSAPジャパンの中期事業計画の策定をめぐる取り組みについて、次のように説明した。

 「事業計画というと、社員は策定に関与することなく、上から言われて従うだけのイメージがある。それを払拭するため、各事業部門のマネージャーだけでなく、若手社員にも策定に参加してもらった。そして、デザイン思考によるミーティングは、会社を飛び出して熱海で集中して行った」

Photo 2018年9月初旬に熱海で行われたSAPジャパンの中期事業計画「Japan 2020」策定オフサイトミーティングの模様(SAPジャパンより提供)

 こうした3つのPへの対処もさることながら、筆者が非常に興味深かったのは、福田氏の次の話である。

 「事業計画の中身について話す前に、そもそもなぜ私たちはSAPで働いているのか、何をやっている瞬間が一番やりがいを感じるのか、私たちはどのような存在になりたいのか、といったように、デザイン思考による“人の視点”からの議論をみんなで徹底的に行った」

 さらに、こう続けた。

 「私もそうだが、SAPで働いているのは、ITを活用して世の中を良くしたい、ビジネスの発展に貢献したい、と思っている人たちばかりだ。ビジネスの発展に貢献するためには、ビジネスに直結する業務ソフト分野で最も影響力のあるナンバーワンの存在であり続ける必要がある。ナンバーワンであり続けるためには、例えば、少なくとも毎年フタ桁成長しなければならない。そう考えていくと、事業計画は自ずと形になってくる」

 そして、こう強調した。

 「大事なのは、まず企業のカルチャーから変えていくこと。そうして形になった事業計画は、上から言われて従うだけのものではなく、“そもそも論”から積み上がってきた内容で、中身の質が全く違う。その違いは例えば、事業計画を遂行する際に、自分たちで掲げた目標だから何としても達成しようと尽力するようになる。経営者はそうしたカルチャーを醸成するのも重要な仕事だ」

 まさしく企業変革の具体的なアプローチの典型例を聞いているようだった。ただ、「初心忘れるべからず」の観点からすると、そもそも論も当たり前の話だ。当たり前だが、デザイン思考の手法を使って、そこからビジネスプロセスやビジネスモデルを変え、そのツールとしてデジタルを活用していくのが、すなわちデジタル変革である。

 ちなみに、SAPが2004年、デザイン思考に着手したのはなぜだったのか。福田氏によると、「HPに買収されるといううわさが広がったのを機に、経営陣が強い危機感を抱いたからだ」とか。今の日本企業の多くが、ひょっとしたらそういう状況にあるのではないだろうか。

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