田村氏が冒頭で述べた「2年ほど前からビジネスが上向いた」のには、セールスフォース側のアクションもある。
Customer Success Platformを金融機関向けソリューションとして提供するには、どのような業務プロセスに対してどんなサービスを提供すればよいのか。それを示したのが、図3である。この図で興味深いのは、一番下に銀行システムが描かれているものの、一番上のB2BおよびB2Cによる取引のプロセスに伴うサービスは、Customer Success Platformをほぼ適用できるということだ。このように業種を越えて適用できるのが、Customer Success Platformの真骨頂なのだろう。
ただ、田村氏によると、「金融分野には情報において特有の管理項目がある。例えば、世帯情報や金融資産を巡る管理の仕方だ」とか。そこで、同社では2016年にそうした金融分野に特有の機能も取り込んだ「Financial Services Cloud」と呼ぶサービスも用意。これが、その後の同社の躍進に追い風となっている。
このFinancial Services Cloudの最新の動きについては同社の発表資料を参照していただくとして、今回の動きで筆者が素朴な疑問を抱いたのは、金融機関にとってセールスフォースのサービスの普及は何を意味するのか、だ。
金融分野におけるデジタル変革といえば、デジタル技術を駆使した新たな金融サービスを開発したスタートアップ企業などとの連携や融合を意味する「FinTech」の動きが注目されてきた。しかし、その目的が顧客接点の拡充にあるのならば、セールスフォースのサービスを活用することは、金融機関にとってまさしくデジタル変革ではないか。
そう思ったので、会見の質疑応答で田村氏にあえて、「金融機関にとってセールスフォースのサービスは、既存システムの改善に向けたSoR(System of Record)か、それともデジタル変革に向けたSoE(System of Engagement)か、どちらの取り組みなのか」と聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。
「基本的にSoE領域の話だ。サービスの中身だけでなく、アジャイル開発やサービスを提供しながら改善していく手法も取り入れている。日本の金融機関のお客さまにも、ぜひ自らの差別化戦略の決め手として活用していただきたい」
今後、金融機関のデジタル変革の進捗(しんちょく)を探る際、FinTechの動きもさることながら、セールスフォースのサービスの普及度もバロメーターの1つとして捉えておきたい。
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