IBMがNotesを売却 グループウェアはオワコンなのか?Mostly Harmless(2/2 ページ)

» 2018年12月18日 07時00分 公開
[大越章司ITmedia]
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やめられないNotesのスクリプト

 初期にNotesを導入した企業の多くが今でも使い続けているのには、理由があります。Lotus Notesは、グループウェアであると同時に、アプリケーションの開発プラットフォームでもあったからです。

 Notesには、オフィスの定型業務を自動化する「Lotus Script」というスクリプト言語が搭載されていました。このスクリプト言語は非常に強力で、少しプログラムができる人であれば、会議室の予約システムや、交通費の申請システムのようなものが簡単に作れてしまうのです。

 Notesを導入した企業では、ユーザー部門がこれを使ってさまざまなプログラムを書き、それを便利に使っているため、Notesを「やめたくてもやめられない」状況に陥っているという話をよく聞きます。

NotesのスクリプトはPaaSの先祖

 Notesのスクリプトがここまで受け入れられたのは、企業に「ユーザー部門で簡単に業務アプリを作りたい」というニーズが昔からあったことを示しています。

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 しかし、Notesは昔も今も高価で、中小企業ではなかなか導入できません。そのニーズを埋めたのは何かというと、Microsoftの「Excel」などのOfficeソフトのマクロでした。

 ただ、経理部門の集計にExcelを使っているという話はよく聞きますが、Excelのマクロでは「ある程度のこと」はできても、Notesとは違ってユーザー管理や権限管理、アクセス権管理などがないため、少し高度なことはできません。

 その後、1999年に「Salesforce」がサービスを開始し、ユーザーが増えていった結果、Salesforceの機能を使って業務アプリを作りたいという要望が出てきました。これを受けてSalesforceのAPIを公開したのがForce.comであり、これが世界初の「PaaS(Platform as a Service)」といわれています。

 Salesforceは、ユーザーデータベースを持ち、アクセス管理も行えることから、Notesのスクリプトと似たようなことができたのです。この後、PaaSという分野が確立され、Force.com以外のPaaSが発展するにつれ、Notesの優位性も薄れていく結果となったのでしょう。

 グループウェア自体がすぐになくなるかというと、一概には言えず、通信回線やユーザーニーズなどの面から見た地域的な要因が大きく影響しそうです。日本では、最近は「サイボウズ」などが人気ですし、インドなどの新興国地域では、今後まだまだグループウェアのニーズがありそうです。HCLも、それを考えて買収に踏み切ったのだろうと思われます。

著者プロフィール:大越章司

外資系ソフトウェア/ハードウェアベンダーでマーケティングを経験。現在はIT企業向けのマーケティングコンサルタント。詳しいプロフィールはこちら


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