山下氏の説明でユニークだったのは、今回の新しい複合機をスマートフォンに例えたことだ。どういうことか。
同氏によると、人々のライフスタイルを変えたスマートフォンの魅力は、アプリもインタフェースも好みに合わせていつでも変えられる「パーソナライズ」、購入した後も常に最新の状態にアップデートできる「いつでも最新」、ユーザーが導入障壁を感じずにITが生活の一部になる「ITが身近に」と、3つのキーワードを挙げることができる。
これに対し、今回の新しい複合機も、個々の企業の好みに合わせて変わる「パーソナライズ」、導入後も進化し続ける「いつでも最新」、企業のクラウド利用を後押しする「ITが身近に」といったように、スマートフォンと同様の価値を提供することができるという。
具体的には、「パーソナライズ」では2019年3月末に100種類の品ぞろえを予定しているアプリケーション群や月単位の契約が可能な料金体系(サブスクリプションモデル)、「いつでも最新」ではユーザーによる作業でアップデートが可能なことや常に強固なセキュリティ、「ITが身近に」では新しい複合機がクラウドサービスのポータルとなって企業のIT利用を促進する、といったところだ。
先に紹介した図1をあらためて見て、複合機をスマートフォンに置き換えても、さほど違和感がないということだろう。イメージとしては分かりやすい説明である。
実は、IT分野で同じようにスマートフォンに例えられた製品がある。サーバやストレージ、ネットワーク機能を1つの筐体に集約したハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品だ。数年前、HCI分野の草分けである米Nutanixの首脳が会見で「HCIのコンセプトはスマートフォンと同じ」と説明していた。
今回の新しい複合機がHCI製品と共通するところがあるとすれば、オンプレミスながらパブリッククラウドサービスと容易に連携を図ることができる「ハイブリッドクラウド機」である点ではないだろうか。
もう1つ気になったのは、今回の新しい複合機はまさしくRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)機能を搭載しているが、同社はほとんどRPAという言葉を使っていなかった点だ。おそらく何らかの事業戦略上のすみ分けがあるのだろう。そんな勘繰りは別として、できることは間違いなくRPAである。
同社が新ソリューションによって促進したいのは、主に中小企業のデジタル変革である。既に複写機あるいは複合機は、ほとんどの中小企業で利用されている。そう考えると、複写機の“大変身”が中小企業のデジタル変革の原動力になるかもしれない。
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