舌の画像を解析し、口臭のリスクを判定するというアプリ「RePERO」。東京・虎ノ門で行われたイベント「THE AI 3rd」では、そのAI開発の舞台裏をライオンと富士通クラウドテクノロジーズが語った。
2018年10月に行われた「CEATEC JAPAN 2018」で展示され、大きな話題を呼んだ口臭判定アプリ「RePERO」。ユーザーが撮影した舌の画像から、口臭リスクを3段階で判定できるものだが、このアプリを開発したのは家庭用品大手の「ライオン」だ。
同社はこの他にも、画像解析で歯ぐきの状態を測定するアプリを試作するなど、AIを生かしたサービス開発に注力している。これまで同社の研究員は、製品の品質コントロールが主なミッションだったが、昨今のビジネス状況に合わせ、2018年1月に「イノベーションラボ」を新設。ラボ内で立ち上がったプロジェクトで、RePEROの開発が始まったという。
現状、口腔ケアの効果を知る方法は限られている。小型の口臭チェッカーも市販されてはいるものの、口臭を調べるためだけに、わざわざ専用デバイスを持ち歩く人は多くない。そこでライオンは、スマートフォンのカメラ機能で舌画像を撮影し、「舌苔」の色味から口臭のリスクを判定することを試みた。
ライオンが保有する舌の画像と口臭の実測値データを使って機械学習を行ったところ、撮影写真に画像補整をかけ、舌の色味情報と息に含まれる硫化水素の濃度に相関があると分かった。しかし、スマートフォンの機種や撮影環境によって相関の出方が変わってしまうため、環境の補正も含め、アルゴリズムをAIで作成する方が適すると考えついた。
「はじめは自社で独自に開発をしていたのですが、なかなかうまくいきませんでした。そこで、富士通クラウドテクノロジーズさんに相談したところ、数日で高精度のアルゴリズムを作成してくれました。プロの実力を知った瞬間でした」(石田氏)
富士通クラウドテクノロジーはその後、AIの判定解析やアルゴリズムのアプリへの実装、データ活用のコンサルティングなどもサポート。ライオンは開発スタートから1年でアプリのローンチにこぎ着けた。
百貨店の接客スタッフを対象にアプリの実証実験を行ったところ、口臭に対する不安の解消や、オーラルケアに対する意識、身だしなみなどの口臭以外のマナーにも意識が向くといった結果が得られたという。
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