インタビュー
» 2019年03月27日 08時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:レガシーは必ずしも「悪」ではない――ホテル VS. 鉄道、既存産業でデジタル変革の壁を超えるには? (2/5)

[池田憲弘,ITmedia]
photo ホテルおかだ 取締役営業部長 原洋平さん

原さん: よく聞かれますが、うちではそういうアプローチはないですね。「人手不足だからこれを入れよう」って言うと拒絶されることが多いです。「どうしてそんなの入れるの?」「余計な作業を覚えたくないよ」という感じで。そもそも、業務を改善してきた結果として今があるわけで、僕もそれは大切にしています。それをITで崩すという形になるのは良くないですよね。

 だから、お客さまに良いサービスや価値を提供することを一番の目的にします。「お客さまのデータが増えることで、掛けられる言葉のバラエティーが増える」というように。仕事を減らすというネガティブな方向じゃなくて、サービスをより良くする話から始めると前向きになれますし、「この辺は削ってみてもいいんじゃない?」という流れにもなっていきます。

虻川さん: ホントおっしゃる通りで、「システムのために」って言うと基本拒絶されますよね。だけど、お客さまのためとすると「そこはしょうがねえな」とか「むしろそれはやるべきだね」となるところが多いので、私もよくやる手です。

インフラ業界も「サービス産業」になりつつある

原さん: 「お客さまのため」というモチベーションは、社内で統一されているんですか?

虻川さん: 昔で言うと、鉄道って単なる運輸業だったと思うんですよ。人が移動するための手段を提供しているという意味で。それが今は「旅客サービス」という表現になっていることもあって、鉄道もバスもタクシーとかも変わってきていると思います。でも、それには教育が不可欠で、運輸サービスがそこに力を入れ始めたのはここ10年、20年くらいですかね。

photo 京王電鉄を運営する京王グループは、鉄道やバスといった交通網の他、ホテルやスーパーマーケット、不動産など、沿線に多彩な事業を展開する(画像提供:京王電鉄)

原さん: 確かに、乗せる人に気持ち良くなってもらうことが元来の目的じゃないですものね。われわれ旅館も、多分同じ状況だと思います。宿泊業は泊めることがベースなんですよ。特に団体旅行の全盛期は「泊めてあげる」という感じで。他のサービス業も似たような雰囲気だったんじゃないでしょうか。

 それが大きく変わったのは、「口コミ」の力が大きかったと思います。事業者側がそれを気にする必要が出てきて、そこから本当のサービスを考える、おもてなしを考えるという方向に、少しずつ切り替わっていったのかなと。

虻川さん: そう考えると、インターネットってすごいですね。

原さん: 宿泊業って、今まではホテルを探そうと思ったら人から聞くか、旅行会社に行くかしかありませんでした。現地の宿泊について情報がないから、旅行会社の人が言うことを信じるしかなかったわけです。これがWeb上で口コミが出たり、写真が出たりと“ガラス貼り”で全部見られているという状態になったのは、大きな変化だと思います。

 ホテルの口コミって「良い面」と「悪い面」が両方あると思うんですが、電車とかの交通インフラは「動いて当たり前」みたいな感覚の人がほとんどだから、口コミという面では大変じゃないですか? 「今日は昨日より早かったぜ」みたいなコメントってまずないですよね。

虻川さん: 早かったら早かったで良くないんですよ。「早発」になっちゃいますから。電車がきっちり1秒単位で走っていても、そんなに感動されるものじゃないですし。ソーシャル上で好印象を持ってもらうというのは、本当に難しいです。

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