インタビュー
» 2019年03月27日 08時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:レガシーは必ずしも「悪」ではない――ホテル VS. 鉄道、既存産業でデジタル変革の壁を超えるには? (1/5)

さまざまな業界でデジタル変革が叫ばれていますが、従来アナログだった業界における変化は目を見張るものがあります。そこで、ホテルと鉄道というアナログなインフラを扱う業界に身を置きながら、IT化を進める2人を招き、レガシーな業界で変革を進めるポイントを話してもらいました。

[池田憲弘,ITmedia]

 昨今、さまざまな業界で「デジタル変革」が叫ばれていますが、特に医療や教育、農業、観光など、従来“アナログ”なオペレーションが多かった業界における変化は目を見張るものがあります。2018年も多くの注目を集めた導入事例がいくつも生まれました。

 しかし、大きな成果が得られる一方で、長い歴史を持つビジネスを展開していることもあり、「変革のスピードが遅い」とする声もあります。レガシーな業界でデジタル変革をスムーズに進めるにはどうしたらいいのでしょうか。

 この記事では、特集「Transborder」でも取り上げた、京王電鉄のIT管理部長である虻川勝彦さんと、箱根の温泉旅館「ホテルおかだ」でIT活用を進める原洋平さんを招き、プロジェクトの話や普段は聞けないようなよもやま話を語ってもらいました。

photo 左がホテルおかだの原さん、右が京王電鉄の虻川さん。対談はもちろん(?)箱根の「ホテルおかだ」で行いました

レガシーは必ずしも「悪」ではない

――「ホテル」と「鉄道」という、アナログなインフラを扱う業界に身を置かれているお二人ですが、自身の業界をレガシーだと感じるところはありますか?

ホテルおかだ 原さん: 「レガシー」というのが、旅館において具体的に何を指すかというと、多分、昔からやっている接客をベースにした「人と人の関係性」や「業務」に関する部分だと考えています。やっぱり、旅館業って「人」と「人」なので。

 僕がエンジニアを辞めて、ホテルおかだに入ったときに感じたのは「コンピュータは悪だ」という現場の雰囲気なんです。「人と人でやっているんだから、そこに人気(ひとけ)のないものを入れるなよ」みたいな空気があったんですよね。人と人で成り立っている部分はすごく大事で、僕も大切にすべきだと思っています。しかし、これだけITが進化すると、人が関わることで逆に悪くなる部分もあると感じています。これを少しずつ変えることで、これからの旅館業が本当に向かうべきところに一歩踏み出せるのかなと思っていて。

 例えば電話。お客さまからかかってきたものならよいですが、スタッフ同士の連絡も電話で行うことも少なくありません。これをメッセージのサービスに切り替えるだけで、効率は上がります。お客さまと相対して話をしたり、何かを提供したりしているときが、おもてなしとして価値が生まれているのであって、それ以外の部分はITを入れていく。こうした流れが旅館業でも始まってきたと感じています。

ホテルおかだ 取締役営業部長 原洋平さんプロフィール

 エンジニアとしてNECなどさまざまな企業に勤めた後、2009年に家業の「ホテルおかだ」に転職。エンジニア時代の経験を生かし、現場の仕事を楽にするツールを自作するうちにIT活用の可能性に気付く。2013年に取締役 営業部長に就任した後は、BI活用やWebページへのAI導入なども進める。

京王電鉄 IT管理部長 虻川勝彦さんプロフィール

 独立系のSIerから1995年に京王電鉄に転職。情報システム部、経営企画部などを渡り歩き、さまざまなシステム構築などを手掛ける。2012年から京王電鉄バスに出向し、kintone導入などITを活用した業務改革を推進した。2017年に京王電鉄に復職し、IT管理部長に就任。同年兼務で京王ITソリューションズ 取締役、京王パスポートクラブ 取締役にも就任する。2018年5月感性AIを設立、代表取締役社長に就任。

京王電鉄 虻川さん: レガシーというと「悪」みたいな捉え方をされることも多いけれど、僕は必ずしもそうではないと思っています。鉄道は「人のレガシーさの良いところ」で安心安全を守っている部分もあるので、それはとても大事だなと。社内では「レガシー、リスペクトしてます」くらい(笑)。古い部分があるからこそ、新しい部分が目立つわけですし。

原さん: 僕も最近は、レガシーってポジティブなイメージで捉えるようにしていますね。常に残り続けるものというか。ずっとあり続けるものをいかに作るか、というのが旅館業でも大事なのかなと思ってます。

虻川さん: とはいえ、IoTやAI、自動運転など昔にはなかったものが今はたくさんあります。そういったトレンドを取り入れて業務を変えるという、言ってしまえば当たり前のことを、今まで積極的にはしてこなかったんだと思うんです。目の前のことを、きっちりかっちりこなすぞ、みたいな雰囲気が鉄道の業界ではすごく強かったですね。

 それが安全につながっている部分もあるので、現場の人たちって「俺たちが整備をして、きっちり整備をして守ってきたんだ」という自負があります。例えば、「IoTを使えば車輪の状態が毎日把握できますよ。人も少なくなってますし、ここは機械に任せましょう」というアプローチをすると、快く動いてもらえることもあります。原さんは、何か人手不足がキーになって、みたいな部分はやっぱりあるんですか?

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