販路開拓に最大50万円支給、創業間もないベンチャーもOK 「小規模事業者持続化補助金」の使い方目からうろこの行政サポート活用術(2/4 ページ)

» 2019年03月28日 14時00分 公開
[発注ナビ]

対象になる 小規模事業者とは?

 小規模事業者持続化補助金の対象になる「小規模事業者」とは、従業員数の少ない会社や営利法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、特例有限会社、企業組合・協業組合)と、個人事業主で、「すでに創業している」ことが前提となっている。創業間もないベンチャーはOKだが、「創業予定」の場合は対象にならない。また、個人事業主の場合は、申請時点で税務署に開業届を提出済みであることが前提になる 。

 従業員数の基準は、業種によって異なる。「卸売業・小売業」「サービス業(宿泊業・娯楽業以外)」の場合は常用従業員数5人以下、「サービス業のうち宿泊業・娯楽業」と「製造業などその他」の場合20人以下となっている。

 一方、補助対象にならないのは、医師、歯科医師、助産師、組合(企業組合・協業組合を除く)、一般社団法人、公益社団法人、医療法人、宗教法人、NPO法人、学校法人、農事組合法人、社会福祉法人、任意団体などだ。

 例えば、IT関連の事業者の場合、「サービス業(宿泊業・娯楽業以外)」に当てはまるので、小規模事業者持続化補助金に申請するには「常時使用する従業員が5人以下(役員を除く)」である必要がある。

 この「常時使用する従業員」には、基本的に、会社役員、期間を定めて雇用されたパート労働者、個人事業主本人は含まれないので注意が必要だ。

補助金の用途は?

 小規模事業者持続化補助金の対象になるのは、事業の継続・発展のために、既存の商品・サービスを新規顧客に売り込むか、新しい商品・サービスを開発して新規顧客に売り込むことで、販路拡大を図る施策にかかる経費だ。

 公募要領では、経営計画に基づいて取り組む「販路開拓」または「販路開拓と併せて行う業務効率化(生産性向上)」の施策の経費と定義されている。

 補助対象として認められている経費は、「(1)機械装置等費、(2)広報費、(3)展示会等出展費、(4)旅費、(5)開発費、(6)資料購入費、(7)雑役務費、(8)借料、(9)専門家謝金、(10)専門家旅費、(11)車両購入費(買物弱者対策事業の場合に限る)、(12)設備処分費(補助対象経費総額の1/2が上限)、(13)委託費、(14)外注費」で、「使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費」「交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費」「証拠資料等によって支払金額が確認できる経費」という3条件を満たすものと規定されている。

 注意したい点は、補助金の交付決定日より前に発注、購入、契約、開発が済んでいるものの経費は、補助の対象外になる ことだ(展示会や見本市への出展申込みは除く)。

 具体的な取り組み事例は、以下の通り(「日本商工会議所 平成29年度補正予算 小規模事業者持続化補助金」から抜粋)。

地道な販路開拓などの取り組み

取り組み例 該当経費
・新商品を陳列するための棚の購入 (1)機械装置等費
・新たな販促用チラシの作成、送付 (2)広報費
・新たな販促用PR(マスコミ媒体での広告、Webサイトでの広告) (2)広報費
・新たな販促品の調達、配布 (2)広報費
・ネット販売システムの構築 (2)広報費
・国内外の展示会、見本市への出展、商談会への参加 (3)展示会出展費
・新商品の開発 (5)開発費
・新商品の開発にあたって必要な図書の購入 (6)資料購入費
・新たな販促用チラシのポスティング (2)広報費
・国内外での商品PRイベント会場借上 (8)借料
・ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言 (9)専門家謝金
・(買物弱者対策事業において)移動販売、出張販売に必要な車両の購入 (11)車両購入費
・新商品開発に伴う成分分析の依頼 (13)委託費
・店舗改装(小売店の陳列レイアウト改良、飲食店の店舗改修を含む) (14)外注費  ※「不動産の購入・取得」に該当するものは不可。

業務効率化(生産性向上)の取り組み

取り組み例 該当経費
「サービス提供等プロセスの改善」の取組事例
・業務改善の専門家からの指導、助言による長時間労働の削減 (9)専門家謝金
・従業員の作業導線の確保や整理スペースの導入のための店舗改装 (14)外注費
「IT利活用」の取組事例
・新たに倉庫管理システムのソフトウェアを購入し、配送業務を効率化する (1)機械装置等費
・新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する (1)機械装置等費
・新たにPOSレジソフトウェアを購入し、売上管理業務を効率化する (1)機械装置等費
・新たに経理・会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する (1)機械装置等費

補助金額はいくらか?

 補助金額と補助率は、原則、50万円が上限額で、補助率は対象経費の3分の2以内。例えば、75万円以上の経費がかかった場合、その3分の2の額で、かつ、補助上限額内の50万円が補助される。かかった経費が75万円未満だった場合は、その3分の2の金額が補助される。

 ただし、「従業員の賃金を引き上げる取り組み」「買物弱者対策に取り組む事業」「海外展開に取り組む事業」のいずれか一つに該当する場合は、補助上限額が100万円までとなり、150万円以上の経費の場合は、100万円が補助される。150万円未満の場合は、その3分の2の金額が補助される。

 また、複数の小規模事業者が連携して取り組む共同事業の場合は、500万円を上限に、「1事業者あたりの補助上限額×連携小規模事業者数」の金額が補助される。

 注意したいのは、補助金が採択されたとしても、すぐに補助金が支給されるわけではなく、経費は先に自社で支払う必要がある点だ。例えば、補助事業期間に実施する施策に75万円の経費がかかる場合、先に自社で75万円を支払い、補助事業期間の終了後、補助金確定通知、補助金の請求を経て、補助金として50万円が支払われるというイメージになる。

【コラム】補助金のイロハ

 補助金の基本知識を確認するには、「ミサラボ」がお勧めだ。ミサラボは、中小企業庁委託事業として中小企業・小規模事業者サポートするサイト。公的機関の支援情報・支援施策(補助金・助成金など)の情報提供や、経営の悩みに対する情報交換の場を提供している。

 「ミサラボ」の「補助金早わかりガイド」ページがでは、補助金申請のポイントや、申請の流れ、必要書類といった一般的な補助金に共通するポイントが整理されていて、分かりやすい。

 また、「補助金・助成金ヘッドライン」ページでは、中小企業向けの補助金・助成金を比較してみることもできる。

 例えば、「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」のそれぞれに適した利用目的、成功事例、助成金内容などがまとめられている。

Photo 中小企業庁発表の3つの助成金の比較(出典:ミサラボの「補助金・助成金ヘッドライン」ページ)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ