マジでしんどい「クラウド時代のカオスなネットワーク」に立ち向かう俺たち情シスに武器はあるのか?俺たちの情シス“スペシャル3”レポート(3/5 ページ)

» 2019年03月29日 07時00分 公開
[柴田克己ITmedia]

ネット環境の安定には「継続的なチューニングが大事」という話

Photo アカツキの徳山さん

 続いては、モバイルゲーム開発企業「アカツキ」情報システムグループの徳山文晟さん。グループのマネジャーとして、社内ネットワークの管理、全社システムの設計や運用、情報セキュリティなどに日夜取り組んでいます。

 ゲーム開発を主業務とする徳山さんの会社では、過去に何度もネットワークの問題に直面していました。例えば、WAN環境においては、特に夕方以降に社外向けのネット回線が遅くなるという状況が起こっていたそうです。その原因は、会社として契約していたネット回線が速度保証のないコンシューマー向けのものだったというものでした。

 「コンシューマー向けの回線は、同じエリアの他の契約者と基地局まで帯域を共用します。夕方以降に速度が遅くなっていたのは、会社の周囲に住んでいる人たちが帰宅してネットを使い始めることで、共用している回線が混雑していたためでした」(徳山さん)

 徳山さんはまず、回線契約を法人向けのものに切り替えます。これによって、夕方以降の目立った速度低下はなくなったそうです。また、問題はWANだけでなく、社内の無線LAN環境にもありました。Macユーザーが多い同社では、基本的に、社内でのネットワーク接続は無線LANが標準であり、かつ、私物を含め、1人当たり2〜3台の端末を接続する状況が常態化していました。

 「150台近い端末で2、3台ほどのアクセスポイント(AP)を使っており、AP1台当たりのキャパシティーは完全に超えている状況でした。また、チャンネル設計なども考慮されていなかったため、始業時や昼休みの直後などに、無線LANが使えなくなるという問題が多発していました」(徳山さん)

 この問題を解消するために、同社では802.11ac対応のアクセスポイント「Cisco Aironet」を複数台導入。無線LANコントローラー(WLC)を導入して一括管理すると同時に、通信用のチャンネルも自律的に制御できるように設定しました。このように無線LAN環境の改善は進んだのですが、オフィスの移転を機に、再度のチューニングが必要になったそうです。

 新たなオフィスでは1フロアが広くなったため、以前のように小さなエリアでの区分けが難しくなりました。すると、端末が密集しているエリアの負荷増を補うために、APの配置密度を上げる必要が出てきます。そこで顕在化したのが、AP間の同一チャンネル電波干渉問題と、DFS(Dynamic Frequency Selection)問題でした。

 無線ネットワークのジャンルでいう「DFS」とは、802.11ac/n/aの規格で5GHz帯を利用しているAPが、外部からのレーダー波(気象レーダーや軍事レーダー)を検知した場合、レーダーとの干渉を避けるために、AP側で利用しているチャンネルを他へ切り替える機能で、5GHz帯対応のAPには法令でDFSの実装が定められています。

 徳山さんの会社では、DFSの影響を受けないチャンネルだけではチャンネル数が足りず、AP間の干渉が大きくなってしまうのでDFSのチャンネルも活用しています。このチャンネルを使う際、帯域を40MHzにすることで、DFS動作時に1つが停波しても完全にダウンしてしまうリスクを回避しているとのことです。また、設置密度の高い環境では、コントローラーによるチャンネルの自動割当がうまく機能しない場合が多いので、固定割当にしているそうです。

 同社では、今後も環境や技術の変化に応じて、ネットワークのアップデートを行っていきたいといいます。WLCのクラウド化に加え、大幅に通信速度が向上し、多数のデバイスが接続する状況でも高スループットを確保できる次世代規格として標準化が進められている「802.11ax(Wi-Fi 6)」への移行なども検討しているとのことです。

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