今回の「俺たちの情シス スペシャル版」では、懇親会のフードスポンサーであるNTT PCコミュニケーションズの中田さんが、企業ネットワークに関する情シスの悩みを解決してくれるかもしれない期待の技術「SD-WAN」に関してのレクチャーを担当してくれました。
「SD-WAN」の「SD」は「Software Defined」の略。これまで物理的な機器との結び付きが強かったさまざまなネットワークリソースをソフトウェアで管理し、制御していく仕組みです。鄭さんのLTに出てきた「SDN」のSDと同じ意味ですが、SD-WANと書いた場合は、特にSD化されたWAN環境のことを指します。
企業にとって、WAN環境といえばキャリアやネットワーク事業者に主導権がある、どちらかというと「面倒くさい」ネットワークといったイメージがあったかもしれませんが、SD-WANによって、ユーザー主導でニーズに合った通信環境を迅速かつ柔軟に構築運用できるようになるのではと期待されています。
SD-WANという考え方は2015年にONUG(Open Networking User Group)が提唱したもの。北米の大手金融、流通、小売業界のメンバーが中心となって自社WANのSD化を推進したのが端緒となっており、世界初の導入事例としては衣料品製造流通の「GAP」が有名なのだそうです。
MPLS(Multi-Protocol Label Switching)と呼ばれるパケット転送技術を有効活用した仕組みで、ネットワークコストや運用の合理化が可能なことから、北米を中心に普及が進んでおり、日本においても徐々に導入企業を増やしているといいます。
「特に日本では、クラウドサービスの利用増加や、Office 365やWindows Updateによるネットワークの輻輳(ふくそう)対策としてSD-WANを検討するユーザーが増えていると感じています」(中田さん)
中田さんは、SD-WANの導入をお勧めしたい企業の特徴として「1人情シス」「クラウド大好き」「API連携によるサービス作りに積極的」「工場や営業所などを海外展開している」「M&Aや事業のスクラップ&ビルドが多くIT整備が追い付かない」「建設現場や店舗など、多拠点に一時的にネットワーク設備を用意したいというニーズがある」といったポイントを挙げました。
例えば「新店舗の開店」に合わせたネットワークの開通を例に考えてみます。このような場合、従来であれば情シスは、オープンまでの工程の管理表を作成すると同時に、WANを提供しているキャリアやシステムベンダーへ連絡し、ネットワークやルーターの設定をそれぞれに実施してもらう必要がありました。「開通までに数週間かかる」と言われたり、連絡ミスによるトラブルでスケジュール遅れが発生したりといった経験があるユーザーもいるのではないでしょうか。
一方、SD-WANでは、ユーザー企業の情シスがGUIベースで必要な設定を行うだけで、新拠点にネットワークを開通させることができます。設定から開通までは、数分程度。万一、ルーターの設定等を間違えた場合でも、ユーザーの手元ですぐに修正が可能です。
「SD-WANの最大のメリットは、人手を極力排しながら、柔軟でコストパフォーマンスの高いICT環境を実現できること。自動化の推進や、人為的ミスの削減といった観点から、労働者人口の減少に伴う人手不足にも対応できる技術として注目されています」(中田さん)
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