「デジタルトランスフォーメーションへの挑戦」に向けて日本企業が考えたいこと迷走する日本のデジタル改革(1/3 ページ)

世界が大きくデジタル変革の動きを見せる中、日本と世界では大きな温度差があった。その差はどこから生まれたのだろうか。“ガラパゴス化”したデジタルトランスフォーメーションとならないためにも、いま日本企業が考えるべきことは何か。

» 2019年04月24日 08時00分 公開
[西野弘CeFIL]

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 北米や中国など海外企業がデジタルを活用して世界規模でビジネスを拡大し続ける中、日本企業はデジタルトランスフォーメーション(DX)の波に乗り遅れているという印象を私は受ける。

 私は「今の状況が変わらなければやがて日本企業は海外のディスラプター(創造的破壊者)に飲まれてしまうだろう」と危機意識を持った。そこで、日本のDXを活性化させようと大手企業26社の賛同を得て2016年秋にデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を開設した。最初は虎ノ門に130坪ほどのスペースを借りてスタートした。

 現在は賛同するメンバー企業も増え、参加者に対してさまざまなプログラムを提供している。例えば、DXについては世界有数のビジネススクールである「IMD business school」から講師を迎え、デジタル変革のフレームワークなどDXに必要な要素を学べる経営幹部向けプログラムを実施している。また、約半年間にわたるシンガポールでの長期プログラムや「4D」と呼ばれる「Digital Transformation」(企業戦略・組織戦略)「Design Thinking」(生活者視点の価値観に変革)「Discover Myself」(生きる道を探す)「Diving Program」(短期間で事業創出に挑む)について学ぶプログラムも提供している。

 今回は、DBICの設立に至ったいきさつとともに、DXへの挑戦に向け日本企業に必要な考え方について解説する(DBICのWebサイトを見ていただきながら本連載を読んで頂けると、より理解が深まるだろう)。

著者紹介:西野 弘

特定非営利活動法人CeFIL 理事/デジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)共同設立者
株式会社HIイニシアティブ 代表取締役

早稲田大学卒業後、全日空商事株式会社などを経てマネジメントコンサルタント会社のプロシードを設立。25年間代表取締役を務め、2016年にはデジタル技術を活用して社会課題の解決に寄与するデジタルビジネス・イノベーションセンター(DBIC)を設立。その他PMI(米国プロジェクトマネジメント協会)日本支部やITサービスマネジメントフォーラムジャパンを設立し、「PMBOK」や「ITIL」を日本に紹介導入した。

日本企業は世界で起きている変化を感じて取れているか

 DBICの設立のきっかけは、かつて仕事で付き合いのあった横塚裕志氏と再会したことであった。横塚氏は、東京海上日動火災保険常務取締役CIO(最高情報責任者)や東京海上日動システムズの代表取締役社長などを務めていた。もともと、横塚氏とはプロジェクトマネジメント高度化に関する仕事などの関係で知り合った。

 2013年のある日、私たちは酒席を設け仕事や過去の話で盛り上がった。その中で「今、世の中が大きく変わりつつあるが、その流れについていくためには学びが大切だ」という話になり、横塚氏を中心に勉強会を開催することになった。幸いにも、外資系IT企業がスポンサーになってくれるという。

 その勉強会は、数カ月に一度朝食会形式で開催され、国内外のユーザー企業やITベンダー、メディア企業などから10人ほどが集まった。これは2013年ごろのことであり、デジタル技術についてはまだ黎明(れいめい)期であった。

 この勉強会では、国内外の企業に属する参加者が現在のIT経営の実情と今後について、忌憚(きたん)のない意見を交わし議論する場となり、1年ほど続いた。

 その後再び横塚氏と酒を酌み交わした際、「日本は世界で起きているデジタル技術の大きなうねりを感じ取れておらず、また感じようともしていないのではないか」「2000年に起きたIT革命を超える大きな進化が、将来起こるのではないか。大人であるわれわれはこうして酒を酌み交わして傍観し過去の思い出話をしているだけではまずいのではないか。何かできることを考え、行動を起こすべきではないか」と話し合った。

 その結果、2014年7月に大手企業の経営トップを中心に120人ほどのメンバーでセミナーを開催し、これから何をすべきか検討を始めた。そして、2015年にDBICを開設するに至った。

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