Workdayのファイナンスにクラウド版Informatica、壮絶な“初物導入の舞台裏”全部見せます怒濤の5並列プロジェクトを振り返る(5/8 ページ)

» 2019年07月04日 12時00分 公開

いい意味での「雑なコミュニケーション」

 ベンダーの担当者からは、「このプロジェクトではよく、『雑にやろう』という声が飛び交っていました。プロジェクトマネジメントをきっちりやろうとするあまり資料作りや報告に多くの労力をかけるのではなく、そうした作業はいい意味で雑に済ませて、なるべく生産性を上げるよう努めました。こうした点も、プロジェクト成功の一因になったと思います」という感想も寄せられた。

 具体的には、進捗報告のドキュメントや会議の議事録はMicrosoft OneNoteのメモベースで済ませ、課題管理はServiceNowでチケットを切り、共有する。報告もテレビ会議を通じてリモートで行うことで無駄な移動時間を極力なくすよう心掛けたという。

 また、普段のコミュニケーションも、メールでいちいちあらたまった文面を書くのではなく、Slackを通じて簡潔に情報をやりとりし、無駄なコミュニケーションコストを極力省く工夫を凝らした。そうした「いい意味で“雑”なコミュニケーション」を全員が徹底したことで、さまざまな変化にフレキシブルに対応しながら、限られた期間の中でプロジェクトを完遂できたという。

 中野氏も、プロジェクト発足当初からコミュニケーションの簡素化、迅速化には気を配ってきたという。

 「プロジェクトマネジメントをお願いしたコンサルタントさんには、『きれいなPowerPointの資料はいりません』『フォーマルなことはやらなくても結構です』と最初にお願いしました。メンバー間の情報共有も、いちいち進捗会議を開くのではなくて、普段からSlack上で密にコミュニケーションを取り、ドキュメントはOneNoteを共有するなど、カジュアルな方法でなるべくムダな工数が掛からないよう努めました」(中野氏)

 こうしたやり方に対して白川氏も、普段、自身が実践しているプロジェクトマネジメント手法との共通点を次のように指摘する。

 「このあたりのコミュニケーションをカジュアルにできるようになると、確かに生産性が劇的に上がります。私自身も相当カジュアルな人間なので、実際にプロジェクトマネジメントを担当する際には、議事録もいちいち書きません。会議が終わった後に、わざわざ議事録を一から書き出して、それを先方に渡してレビューしてもらって――といった作業は、プロジェクトの進捗には一切関係ありません。

 会議の最中にホワイトボードに議論の内容をリアルタイムで書き出していって、会議が終わったらそれを写真に撮ってデータを共有フォルダにアップロードしておしまいです。こうしたやり方に抵抗感を抱くお客さんも確かにいますけど、そこは『こうしたやり方に賛同していただけないのであれば、うちとは付き合わない方がいいですよ』というぐらい、はっきり言い切ってしまいますね」(白川氏)

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優れたプロジェクトマネジメントとは

 プロジェクト成功の要因として、PwCから招いたコンサルタントによる着実なマネジメントを挙げる声も多かった。特にクックパッド側のプロジェクトメンバーからは、その働きぶりを高く評価する声が多く挙がった。

 「プロジェクト立ち上げ当初は現場の人員が不足しており、1人で複数の案件を同時並行でこなさなくてはならず、かなり混乱していました。プロジェクト全体の状況がどうなっていて、自分が明日、何をすべきかすら分からない状況でした。しかし、プロジェクトマネジメントの専門要員の方に入っていただき、『今プロジェクトはこういう状況にあって、いつまでにこれをやらないといけません』と明確に示してもらったおかげで、重大な遅延を発生させずに済みました」(中野氏)

 実際にプロジェクトマネジメントを担当していたコンサルティング会社の担当者は、次のように当時の状況を振り返る。

 「プロジェクトマネジメントのさまざまなタスクの中でも、特に火消し的な役回りが多かった気がします。複数のシステムの導入が同時並行で走っていたので、常に中野さんと目を光らせて、どこから煙が上がっているかを検知して、いち早く細やかなフォローを提供することを心掛けていました」(PwCのプロジェクトマネジメント担当)

 当初のコンサルティング契約の範囲は、Workdayの導入および他のシステムとの連携部分だけだったという。しかし実際にはそれだけにとどまらず、他のシステムの導入も含めたプロジェクト全体のマネジメントまでのカバーが必要な状況だったという。

 「Workdayの部分だけを見ていても、結局、他の部分で遅延が発生すれば影響を受けざるを得ませんし、プロジェクト全体も当然のことながら遅延します。従って、今回は当初から『プロジェクト全体を見ていこう』と考えていました。そうした意気込みが、結果的には現場に対する細かなフォローにつながったのかなと思います」(PwCのプロジェクトマネジメント担当)

 中野氏も、「今回お願いしたプロジェクトマネジャーが、本来のマネジメントのスコープには含まれていなかった周辺プロジェクトの状況まで見てくれたおかげで、精度の高いプロジェクトマネジメントが実現できました。コンサルティング企業というと、『スコープ対象外のものは一切関知しない』というドライな印象がありますが、そうではない対応をしていただいてとても感謝しています」と述べ、その親身な対応ぶりを高く評価した。

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