余談ですが、竹本氏の経歴で話題となっている「はんこ」に関しても一言補足しておきましょう。毎日新聞では「例えば印鑑の印章をデジタルで印字しておいてそれを送れば、印鑑を押したのと同じ効果を持つことも考えられる。そうすると印鑑を作る仕事は維持できる」と竹本氏が話したという記事が掲載されています。
これを読んで、確かに私も少し不安に思いました。印鑑文化は否定しません。しかし、印鑑の処理そのものを単にデジタルに移行することに意味はあるのでしょうか。いまや3Dプリンタを用いれば、実体のあるものをある程度の精度で複製できてしまいます。印影をスキャンしてデジタル化した“画像”なら、完全に同一のものを複製するのはとても簡単です。
印鑑をデジタル化するのは何のためでしょうか。これは、「デジタライゼーション」と「デジタルトランスフォーメーション」の違いを象徴する事例の1つかもしれません。
デジタルトランスフォーメーションとデジタル化の違いに関しては、上記の記事で掲載されている1枚の絵がすべてを語っていると思いますので、ぜひご参照ください。
願わくば、普及の進まないマイナンバーカードに「電子証明書の他に、リアル印鑑での認証も追加しよう!」などというあさっての方向に向かわなければいいのですが……。
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門 「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる。
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