製造業から社会全体のDXへ――創業100年超え老舗企業同士の協業の野望Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年10月21日 12時45分 公開
[松岡功ITmedia]
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世界へ“モノづくりの現場プロセス”の進化を発信

 以上が両社による協業の発表内容だが、半導体製造分野における話だけでは本コラムで取り上げづらいと思っていたところ、会見での両社首脳や幹部の話を聞いて、この協業にはどうやら大きな野望がありそうだと感じた。

 まず、パナソニックの樋口氏は、「今回の協業は、日本IBMのシステムソリューション力とデータ分析技術およびパナソニックのエッジデバイスとプロセス技術を組み合わせることによって、製造業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に推進するとともに、日本から世界へ向けて“モノづくりの現場プロセス”の進化を発信していきたい」と語った(図2)。

Photo 図2 両社の協業のポイント

 これを受けて、日本IBMの山口氏は次のように意欲を語った。

 「日本IBMは、IBMが持つ先進の技術やノウハウを日本に持ってきて、パートナーである日本企業の技術やノウハウと組み合わせて世の中に貢献できるソリューションを創出していくのが、外資としての役目だと考えている。今回のパナソニックとの協業でもそうした役目を果たしていきたい。半導体製造分野での両社の協業は今回が初めてだが、こうした従来の枠にとらわれない協業を今後も積極的に押し進め、製造業、ひいては社会全体のDXに貢献していきたい」(山口氏)

 この山口氏の話に、日本IBMの武藤氏が次のように続けた。

 「今、社会全体として、モノづくりからコトづくりへの大きなシフトが進んでいる。DXの取り組みもそうした流れの中にあり、パナソニックも日本IBMも社会に貢献できるように努力している。そうした両社の協業のポテンシャルは、今回の半導体製造分野を軸とした製造業向けをはじめとして、あらゆる産業分野へ広がっていく可能性があるのではないかと期待している」(武藤氏)

 さらに、武藤氏はこう付け加えた。

 「DXにおいてはAI(人工知能)やIoT、クラウド、モバイルなどの最新技術を活用するが、これらを支えるのは半導体だ。半導体の進歩があってこそ、これらの技術が生きてくる。そう考えると、今回の両社の協業はDXを支えるものでもある」(武藤氏)

 読者諸氏もこれらの発言から、両社の協業における野望を感じ取っていただけただろうか。加えて筆者は、冒頭で紹介した「10年後に250億円規模の売り上げ」との目標が、両首脳が会見に登壇した割には低いと感じていた。その点からもかなりのポテンシャルがあるものと推察される。

 IBMは108年、パナソニックは102年と、いずれも創業100年を超える名門企業同士の新たな協業が、今後どのように発展していくか、注目していきたい。

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