あくなき“非連続的な進化”へ――「情報通信白書」が説くDXの正体Weekly Memo(1/2 ページ)

総務省が先頃、日本のICT産業における現状や課題をまとめた「令和元年版 情報通信白書」を公表した。今回も読み応えがある。本稿ではその中から、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する内容に注目したい。

» 2019年07月16日 14時00分 公開
[松岡功ITmedia]

企業に組織やビジネスモデルの変革を迫るDX

デジタル・トランスフォーメーション−あらゆる産業にICTが一体化していく

 総務省が先頃公表した「令和元年版 情報通信白書」において、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関する項目でこの見出しが目に飛び込んできた。

 総務省が毎年、この時期に公表する「情報通信白書」は、今回で47回目を迎える。国内のICT関連統計資料として最も長期かつ広範囲に網羅しており、一部を除いてオープンデータとして利用できるようになっている。

 令和元年版では「進化するデジタル経済とその先にあるSociety 5.0」と題した特集が組まれ、「ICTとデジタル経済はどのように進化してきたのか」といった話題をはじめ、ICTの産業や政策についてのについての動向がまとめられている。

 本稿ではその中から、冒頭で紹介したDXに関する内容に注目したい。ちなみに、平成30年版29年版28年版も本コラム連載で取り上げてきたので、参照していただきたい。以下、今回の白書からDXに関連して筆者が注目した箇所をピックアップしておく。

 あらためて、DXと「従来の情報化/ICT利活用」は何が違うのか。総務書が情報通信白書の中で示した最大の違いは、従来の情報化/ICT利活用では、既に確立された産業を前提に、あくまでもその産業の効率化や価値の向上を実現するものであったのに対し、DXでは、その産業のビジネスモデル自体を変革していくということである(図1)。

Photo 図1 DXと従来の情報化/ICT利活用の違い

 DXにおいてICTは、あらゆる経済活動の根本となるコスト構造を変えていく。そして、DXを実践するICT企業は新たなコスト構造に適した形のビジネスモデルを構築して、あらゆる産業に進出している。同時に、あらゆる産業における伝統的なプレイヤーは、新たなコスト構造に適した形へと自らを変えていくことが求められている。これがDXの本質の1つである。

 すなわち、DXは単にICTを利活用して企業のビジネスを改善する取り組みではなく、企業に組織やビジネスモデル自体の変革という“非連続的な進化”を求めるものである。DXは同時にそうした進化を果たせない企業に市場からの退出を迫るものであり、伝統的なプレイヤーにとっては生き残るために必要な取り組みであることに留意が必要である。

 ICT企業の市場参入によって、伝統的な企業が市場からの退出を余儀なくされる事例が出てきている。これを、デジタルディスラプション(デジタルによる破壊)という。この動きは、伝統的な産業における従来のコスト構造を前提としたビジネスモデルが、ICTによる新たなコスト構造に適した形のビジネスモデルとの競争の中で、存続が困難となる場合があることを示している。

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