製造業から社会全体のDXへ――創業100年超え老舗企業同士の協業の野望Weekly Memo(1/2 ページ)

パナソニックと日本IBMが半導体製造分野で協業すると発表した。限られた分野での協業に見えるが、会見を聞いてみると、両社にはどうやら「DX」をキーワードに大きな野望があるようだ。

» 2019年10月21日 12時45分 公開
[松岡功ITmedia]

両社による半導体製造分野での協業内容とは

 パナソニックと日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)が先頃、半導体製造分野で協業すると発表した。両社で半導体製造工程のOEE(総合設備効率:Overall Equipment Effectiveness)最大化と高品質なモノづくりを実現するためのシステムを開発する。パナソニックは新システムを採用した機器を2020年度末に発売する予定。2030年度に年間250億円規模の売り上げを目指すという。

 発表会見には、パナソニックから代表取締役 専務執行役員でコネクティッドソリューションズ社 社長の樋口泰行氏とコネクティッドソリューションズ社 上席副社長の青田広幸氏、日本IBMから代表取締役社長の山口明夫氏と専務執行役員の武藤和博氏が登壇した。

Photo 左から、日本IBMの武藤氏、山口氏、パナソニックの樋口氏、青田氏

 両社の発表によると、パナソニックでは現在、回路形成プロセス事業の中で半導体製造工程向けに、「ドライエッチング装置」、プラズマを用いて高品質なウエハーを切り出す「プラズマダイサー」、金属接合性や樹脂密着性を高める「プラズマクリーナー」、高精度ボンディング装置などの「エッジデバイス」、また新工法を開発、販売し、先端パッケージングのモノづくりに貢献している。

 一方、日本IBMは半導体製造工程向けの知見により、APC(高度プロセス制御:Advanced Process Control)、FDC(故障・予兆管理:Fault Detection and Classification)などのデータ解析システムや、上位レイヤーのMES(製造実行システム:Manufacturing Execution System)などを開発、販売し、品質向上や生産管理の自動化を実現している。

 そうした中で、近年ではIoT(Internet of Things)や次世代通信「5G」向けデバイスを中心に、高速、小型、多機能化が加速している。また半導体前工程と後工程の間に、前工程ウエハープロセスと後工程パッケージング技術を組み合わせた中間工程を有する先端パッケージング技術を採用したモノづくりが拡大している。

 今回の協業では、両社が共同で開発するデータ解析システムを、パナソニックのエッジデバイスに組み込んだ高付加価値化システムによって、エンジニア工数の大幅削減と品質の安定化、設備稼働率向上の実現を目指す。

 具体的には、半導体製造工程の先端パッケージング新工法として注目されているプラズマダイサーのレシピ自動生成システムと、後工程で実績のあるプラズマクリーナーにFDCシステムを組み込んだプロセスコントロールシステムの開発を目指す。

 さらに、その高付加価値化システムと日本IBMのMESを連携することで、工場トータルでのOEE最大化と高品質なモノづくりの実現を目指す構えだ(図1)。

Photo 図1 両社の協業で目指すもの
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