特集
» 2019年10月23日 11時00分 公開

AI人材育成に欠かせない、たった1つの視点:文系でもAI活用に必要な数学的思考力は簡単に身に付く (1/2)

ビジネスのあらゆるシーンで、AIを活用するための思考、すなわちデータをビジネスに生かす思考を持つことが求められはじめている。とはいえ、企業でそのような人材を教育しようと思っても無謀なのではないか――。実は、文系出身であっても、必要な数学的思考力を簡単に身に付けられる方法がある。

[猪飼美羽,豆蔵]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

著者紹介:猪飼美羽(いかい みわ)

豆蔵 デジタル戦略支援事業部 第1グループ コンサルタント

早稲田大学教育学部数学科在学中にグラフ理論に出会い、応用数学に興味を持ち、東京工業大学大学院情報理工学研究科に進学。オペレーションズリサーチの分野に触れ、実生活で起きている問題をモデル化できる面白さを知る。卒業後、独立系ソフトウェアハウスに入社。主に医療系の自社プロダクツ開発を行いながら、顧客との要件定義、システム導入、保守まで担当。一方でチーム内の新人に対してOJT/OffJTの企画・実施も担当。豆蔵入社後は自然言語処理を扱ったデータ分析プロジェクトに参画し、調査研究支援、プロトタイプ実装などを担当。現在は分析経験を生かし、企業におけるAIや数理教育でのサブ講師もつとめる。

 これからの企業に求められる「AI人材」とはどのような人材か、どのように育成すればよいのかを解説する本連載。前回は、デジタル化によって世界が数値で表現できるようになってきたこと、その「数値化する世界」をビジネスに生かすために、文系出身であっても「課題解決に向けて、データを分析する」という数理的素養が求められていることを解説した。

 とはいえ、これまで数学を十分に学んできていないビジネスパーソンにいきなりその能力を身に付けさせることは難しい。そこで、第2回は数理的素養とは具体的にどのようなものか、効率的に身に付けるにはどうしたらよいかを紹介する。

ビジネスにおける目的と目標

 データ分析に限らず、ビジネスの現場では「目的」や「目標」が必ず存在する。しかし、例えばこのような場面に遭遇することはないだろうか。

  • 目的:新規事業を立ち上げて売り上げをUPする

目標:PoC(概念実証)を実施してアイデアを検証する

実際:PoC実施自体が目標となり、新規事業がなかなか立ち上がらない

  • 目的:あるサービスの新規顧客を開拓する

目標:データ分析で顧客分析を実施して新しい顧客層を見つけること

実際:データを可視化自体が目標となり、分析が進まない 

  • 目的:RPA(Robotic Process Automation)導入で業務を効率化する

目標:ツールを用いて、業務の効率化を図ること

実際:ツールを作ること自体が目標となり、手動で実施すべきことまでシステム化して、かえって時間がかかるようになってしまった

  • 目的:アジャイル開発を導入することで要求の変化に柔軟に対応する

目標:UML(Unified Modeling Language)を使って機能や仕組みを可視化し、チーム内の意思疎通を図ること

実際:UMLを精緻化することが目標となり、なかなか実装に入れない

 これらは、本来の目的や目標が見失われてしまった例である。あらゆるビジネスの場面で目標はすり替わりやすい。そうにならないためにも、目的と目標の設定は重要なプロセスだ。なお、前回説明したように、データ分析においては「何のためにデータ分析を行うのか」が目的であり、「そのために何が分かればよいのか」が目標となる。例えば、「この商品の売り上げを上げる」という分析目的を設定した場合は、「広告が最も効果的に働く購買層を明らかにする」という分析目標を設定し得る。

 特に、AIを含むデータ分析(以下、「データ分析」と記す)は、実践企業においても導入過程であったり発展途上であったりする。企画する側も実装する側も、「分析目的」を理解したうえで、最終的になんらかの数式に落とし込んで計算をすることを考慮して「分析目標」を明確に設定し、共有しなければならない。ここに「数学的思考力」が必要になる。

数学的思考力とは

本稿における数学的思考力とは、いわゆる数学の知識ではなく以下の4つを指す。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ