分析目的を理解し目標を決める際にビジネスと数理項目をつなげるのはなかなか難しい作業でもある。その一歩を助けるのが、豆蔵の提案する人材育成フレームワークである(注)。
これは、ビジネスにおいてデータ分析が必要になるシーン(以降、ユースケースと呼ぶ)を事前にマトリックスの一部のセルに記入し、ユースケースに必要な数理項目(公式や数学的理論など)を対応するセルに配置したもの。実際のユースケースごとに「必要な数理項目を例示する」ことで、分析目標を設定するための思考プロセスをガイドするというフレームワークだ。
例として、「未来」×「最適化問題」(マトリックスの右下)では、ユースケースとして「カーナビの最短経路検索」、数理項目として「最短経路問題」「ダイクストラ法」を挙げている。
この場合、「カーナビの最短経路検索」というユースケースが分析の目的だ。これを実現するために、どのような「分析目標」を立てれば良いのかを考えなければならない。この際、3×3のマス目に沿って適用できそうな数理項目が整理されていると、それがヒントになり、分析目標をイメージしやすくなる。上記の例の場合は、「最短経路問題」「ダイクストラ法」がヒントとなる数理項目だ。実際の思考プロセスは以下の図3のようになる。
豆蔵では学ぶべきユースケースと数理項目を絞り込んで教育カリキュラムを作成し、よく使う分析目的と分析目標から分析手法を選択するプロセス(図3の「目標」設定プロセス)を重視して、この思考方法自体を訓練できるような人材育成を行っている。
ちなみに、分析に必要な数理項目の理論自体を学ぶ際にもこのフレームワークは有効だ。教会のれんが積みで、何のためにれんがを積むのかを教えたほうが効率的というような話があるように、それらの理論が「何に使えるのか」「何のために使うのか」ということを理解した上で数理項目を学ぶことに意味があるためだ。
注:本フレームワークは豆蔵がデータ分析プロジェクトにおいて、理解しておくとよいユースケースを選択、強調したものである。このため、全てのデータ分析プロジェクトのユースケース、数理項目を網羅してはいない。
最後にデータ分析プロジェクトでチェックしておくべき項目を7つ準備した。以下のチェック項目はAIプロジェクト企画、実働開始時だけでなく、定期的に再確認することをお勧めする。
第2回では、第1回「数値化する世界のサバイバル術 -AI時代に求められる数理的素養とは-」で提起された「数理的素養」について、そのスキルが必要となるシーンと、具体的にどのようなスキルであるのか、さらにデータ分析プロジェクトのライフサイクルで、どのように使われるのかを当社独自のフレームワークをベースに紹介した。
このスキル自体は、理系、文系といった枠ではなくビジネス課題に直面する全ての人が活用できる。
産業界の人材が持つべき「数理的素養」の重要性については、2019年3月に経済産業省からの公開された報告書「数理資本主義の時代〜数学パワーが世界を変える〜」中でも詳しく提言されている。
豆蔵が主催するプライベートイベントの「豆蔵 DX day」(10月25日)では、報告書の発行にあたり、中心的な役割を果たされた、経済産業省で製造産業局総務課参事官を務める中野剛志氏による講演を予定している。「2025年の崖」を飛び越えるために必要な数学パワーについての話も聞けるので、ぜひ足をお運び頂きたい。
次回は、豆蔵において数々のデータ分析プロジェクトを担当するサイエンティストより、サイエンティストに求められるスキルや人物像について紹介したい。
情報化業務の最適化とソフトウェア開発スタイルの革新を推進するコンサルティングファーム。デジタルトランスフォーメーション関連ソリューションでは、ビジネスのデジタル化による事業の効率化、競合優位への判断、新製品や新サービスの創出に求められる高度なデータ解析、AI/機械学習に関するコンサルティングや人材育成を提供する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.