NTTコミュニケーションズが2012年から提供してきたパブリッククラウドサービスを2020年末で終了すると発表した。この動きをどう捉えるか。これまでの同社のクラウド事業における変遷から読み解いてみたい。
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2019年10月24日、2012年から提供してきたパブリッククラウドサービス「Cloudn(クラウド・エヌ)」を2020年末で終了し、同時に提供してきた企業向けのプライベートクラウドサービス「Enterprise Cloud(エンタープライズクラウド)」へ統合すると発表した。
Cloudnの新規申し込みの受付は、2019年12月1日をもって停止する。NTT Comはこれに伴い、大中規模システムの顧客はEnterprise Cloud、中小規模システムの顧客はNTT Comのグループ会社であるNTTPCコミュニケーションズの「WebARENA(ウェブアリーナ)」への移行を全面的にサポートするとしている(図1)。
NTT Comは、クラウドサービスの統合によりEnterprise Cloudに経営資源を集中させることで、顧客のクラウドシフトをサポートするサービスを拡充する構えだ。なお、Cloudnの契約数は企業と個人を合わせて約5000件で、このところは横ばいで推移していたという。
同社は2008年に「BizCITY」ブランドで提供開始したサービスを皮切りに、2012年6月にクラウドサービスとしてCloudnおよびEnterprise Cloudを提供開始し、顧客ニーズの多様化に対応してきた。同社のクラウド事業における変遷は、図2に示した通りだ。
クラウドサービスの市場環境については、パブリッククラウドに加えて、オンプレミスで運用している基幹系システムの移行などにより、柔軟かつ高度な運用管理を行うセキュリティレベルの高いプライベートクラウドと、双方を利用するハイブリッドクラウドの需要が増えている、というのが同社の見方である。
この考えを土台に、同社はここ数年、Enterprise Cloudを軸としたハイブリッドクラウドソリューションの展開に注力しており、パブリッククラウドについては外部のハイパースケールクラウド事業者との協業を進めてきている。
さらに、この9月に発表したデジタルトランスフォーメーション(DX)支援のための「Smart Data Platform」により、シームレスなデータ利活用を可能とするプラットフォームを展開する。その軸となるEnterprise Cloudを強化するため、今回のクラウドサービス統合の運びになったとしている(図3)。
同社の最新の取り組みであるSmart Data Platformについては、2019年10月7日掲載の本コラム「新たな創業へ――NTT Comが打ち出したDXプラットフォーム事業戦略」を見ていただきたい。
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