大手のデータセンター事業者が相次いで興味深い取り組みを発表した。その動きから、企業におけるクラウドサービス利用の最新事情を探ってみたい。
「日本のデータセンター市場は今、非常にホットだ」――。こう語るのは、データセンター事業をグローバルで展開しているEquinixの日本法人、エクイニクス・ジャパンの代表取締役で北アジア事業も統括している古田敬氏だ。同社は先頃、東京の有明に都内で11拠点目となる国内最大規模のデータセンターを開設。古田氏の冒頭の発言は、その発表会見で語ったものである。
日本で最大規模という新データセンターの内容については関連記事を読んでいただくとして、筆者が注目したのは、新データセンターが、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud、IBM Cloudといった「メガクラウドサービス」との接続を容易にしていることである。Equinixはもともと、こうした柔軟なネットワーク接続機能を得意としている印象がある。今回の新データセンターによって、国内最大規模のファシリティ(建物、電気設備、空調設備、機械設備など)とともに、複数のクラウドサービスを活用する環境をさらに拡充した形だ。
古田氏は冒頭の発言の後、「特にこの1年ほど、東京でのデータセンター需要はこれまでにない盛り上がりを見せている」と言い、その理由の1つとして「プライベートクラウドをベースとするお客さまも、複数のパブリッククラウドサービスを使ってみたいというニーズが増えてきている」ことを挙げた。
同社のデータセンター利用において、そうしたケースが多いということか。会見後、新しい施設内を案内してくれたエクイニクス・ジャパンIBXオペレーションズ部門長の齋藤晶英氏に聞いたところ、「当社のデータセンターでプライベートクラウドを運用しているケースはもちろん、システムを自社で保持しているお客さまも当社で1ラックでも利用していただければ、本来はさまざまな手間がかかるマルチクラウドの利用環境を容易に実現できる。このニーズが今、急速に高まっている」とのこと。この話は大いに興味深い。
もう1つ、大手データセンター事業者の新たな取り組みで筆者が注目したのは、セコムグループのアット東京が先頃発表した「Cloud Direct Connect Pack」だ。ユーザー企業の拠点から同社のデータセンターへ接続し、そこをネットワークの集約ポイントとして利用することでネットワークの最適化を図るものである。
注目点は、アット東京のデータセンター内にある複数のメガクラウドサービスのダイレクト接続ポイントをはじめ、さまざまなサービス事業者との接続が可能なことから、図1のようにセンター内で容易に相互接続できることだ。これもすなわち、ハイブリッド環境、さらにはマルチクラウドへのニーズに対応した動きである。
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