DXに「出島」は必要か?――NECと富士通の違いに見るDX組織設立の勘所Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年11月11日 12時20分 公開
[松岡功ITmedia]
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NECは「ハイブリッド組織」、富士通は「出島」を採用

 そして、もう1つの発表が、吉崎氏が統括するデジタルビジネスプラットフォームユニットにおいて、DX専任組織として「Digital Business Office」を新設したことだ。これが前述の出島を巡る話の発端である。

 同氏によると、Digital Business Officeは「NECグループのDX関連のエキスパートとそのナレッジを集約し、構想段階から実装、運用までお客さまのDX実現をトータルに支援するための組織」だという。また、「デジタルフレームワークやデジタルプラットフォームが整ってきたので、これらを実践してDX事業を加速するための組織」とも説明した。

 組織内の人材としては、卓越した業務ノウハウを持つ「リードコンサルト」、デザイン思考のノウハウを持つ「ビジネスデザイナー」、テクノロジーのノウハウを持つ「デジタルエキスパート」で構成。「外部採用と内部シフトによるハイブリッド組織」(吉崎氏)として100人体制でスタートし、現在NECで顧客企業に対応している営業や技術支援をしている部門と連携して活動していく構えだ。

Photo 図3 Digital Business Officeの概要

 この専任組織の在り方について、会見の質疑応答で「DX事業について別会社や隔離した組織で推進する出島方式と、どう違うのか」と問われて、吉崎氏が答えたのが冒頭のコメントである。その中で「全社組織をシフトしていけるような体制」と述べていたのが、営業や技術支援をする部門と連携して動くDigital Business Officeのことである。

 また、NECではかねてDX事業を推進する「デジタル人材」を、2018年段階での1600人から2020年に3000人規模に増強する方針を打ち出しているが、Digital Business Officeが今後その“育成装置”としての役目を担っていくことも、同社の目算としてあるようだ。

 興味深いのは、NECにとって最も競合相手である富士通が、2020年1月にDX事業を推進する新会社を設立すると、すなわち出島方式を採用することを公表していることだ。

 富士通の時田隆仁社長が新会社設立について説明した9月の記者会見で、筆者は出島方式を採用した理由を聞いた。すると時田氏は次のように答えた。

 「DX事業について、出島として切り出すか、本体の中で進めるべきか、社内でも相当議論した。その結果、私たちは完全に自立した会社として推進することに決めた。扱う製品やサービスも富士通のものを前提にせず、お客さまに最適な価値を提供することを第一義とする会社にしていく。本体はそれに刺激を受けて、あらためて良い製品やサービス作りに尽力するといった相乗効果も生まれるだろう。DX事業を推進する新会社は、将来的に富士通グループ全社のレファレンスになると確信している」(時田氏)

 こう聞くと、富士通とNECはアプローチこそ違うが、将来的には全社でDX事業を推進していくことを見据えているのは同じだ。

 ただし、見方を変えれば、富士通は出島方式を採用するが、その陣頭指揮は社長自らが執っているのに対し、NECは社内でDX事業を推進するうえで外部からリーダー(吉崎氏)を招いて臨んでいる。こう見ると、出島方式の“良しあし”ではなく、それぞれの企業にとってどの進め方がDX事業を成功に導けるかをよく考えることが肝心といえそうだ。

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