クラウド導入をSIerに“丸投げ”するな――ガートナーが直言Weekly Memo(1/2 ページ)

企業のIT化をSIerに“丸投げ”することが問題視されてきたが、それがクラウド化でも起きている――。今回はガートナーの名物アナリストである亦賀忠明氏のこんな直言を取り上げて考察したい。

» 2019年11月18日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]

マジック・クアドラントに見るグローバルと日本の違い

 「パブリッククラウドを採り入れた仕組みを提案してほしい、とシステムインテグレーター(SIer)に“丸投げ”する企業が、驚くほど多い」――。

 ガートナー ジャパン ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリストの亦賀(またが)忠明氏は、同社が2019年11月12〜14日に都内ホテルで開催した「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」の「クラウドコンピューティング・トレンド2020」と題した講演でこう嘆いた。

Photo ガートナー ジャパン ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリストの亦賀忠明氏

 なぜ、嘆くのか。「丸投げなんかしたら、パブリッククラウドを採用する意味がなくなってしまう」と同氏。一体、どういうことか。この続きは後ほど解説するとして、クラウド市場の概況について講演の中から幾つか取り上げたい話があったので、そちらを先に紹介したい。

 まず、日本における外部クラウドとオンプレミスへの投資意欲の変化について。図1の左側がその推移を表したグラフである。見ての通り、両者の間は年々広がってきている。当然の傾向だろうが、亦賀氏は「松竹梅の松には当面オンプレミスが残る。今後はオンプレミス対クラウドの議論が過去のものになる」とし、「10年後のイメージが重要になる」と強調した。

Photo 図1 外部クラウドとオンプレミスへの投資意欲の変化(出典:ガートナー ジャパンの資料)

 ちなみに、「松竹梅」というのは、松が99.999%、竹が99.99%、梅が99.9%を表す可用性のサービスレベルのことである。

 次に、クラウドはバイモーダルで捉えよ、というガートナーの見解について。企業が取り組むクラウドには、従来の業務システムに代表される「モード1」と、デジタル技術を駆使する「モード2」がある。それぞれの内容や捉え方については図2を見ていただきたい。1つ強調しておくならば、よく使われる「クラウド化」とはモード1のことで、モード2はもともとクラウドファーストである。

Photo 図2 クラウドにおけるバイモーダル(出典:ガートナー ジャパンの資料)

 ただ、デジタルトランスフォーメーション(DX)はモード2だけでなく、モード1も合わせた全体の取り組みだ。その意味でもバイモーダルで捉えるべきである。

 もう1つ、市場の概況を。図3は、クラウド基盤であるIaaS(Infrastructure as a Service)の日本市場におけるベンダー別クラウド採用率と、マジック・クアドラント(MQ)2019年版を示したものである。亦賀氏によると、左側の採用率はシェアではなく、個別の伸びを示したグラフで、それぞれの勢いが見て取れる。

Photo 図3 IaaSの日本市場におけるベンダー別クラウド採用率とマジック・クアドラント2019年版(出典:ガートナー ジャパンの資料)

 右側のMQはガートナー独自のリサーチ手法で、リーダー、チャレンジャー、ニッチプレイヤー(特定市場指向型)、ビジョナリー(概念先行型)の4象限からなる図に、対象となる市場で競合するベンダーの相対的な位置付けを示したものである。ちなみに、図の縦軸は「実行能力」、横軸は「ビジョンの完全性」を表しており、右上に位置付けられるほど評価が高いことを意味している。

 このMQにおける2019年版と2018年版を比較した最大の変化は、GoogleがAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftと同じリーダーの領域に位置付けられたことである。

 それもさることながら、亦賀氏がMQについて解説を加えたのは、グローバル市場における2019年版との比較だ。グローバル版では、リーダー領域の顔ぶれは日本版と同じだが、あとはニッチプレイヤー領域にAlibaba Cloud、Oracle、IBMの3社が記されているだけだ。一方、日本版には、ニッチプレイヤー領域に7社が記されているが、グローバルではこれらのサービスをクラウドIaaSでなく「仮想ホスティング」と見なしており、「リーダー領域の3社とは同列で比較する対象でないことを認識しておく必要がある」(亦賀氏)としている。

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