日本マイクロソフトが業種別ソリューション展開に注力している。クラウドによるプラットフォーム事業を主体としてきた同社が、これまで手掛けてこなかった領域に足を踏み出したのはなぜか。そこには同社のしたたかな思惑があるようだ。
「当社はお客さまのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するプラットフォームベンダーとして、今後は業種別ソリューションの展開にも注力していきたい」――。日本マイクロソフト執行役員常務エンタープライズ事業本部長のヘニー・ローブシャー氏は、同社が先頃開いた製造業向け事業の取り組みに関する記者説明会でこう強調した。
日本マイクロソフトは7月からスタートした2020年度の重点施策として、「お客さまの業種業態に最適な支援の推進」、すなわち業種別ソリューションの展開に注力することを掲げている。今回の会見のテーマである製造業向け事業の取り組みは、まさしくその1つである。
ローブシャー氏によると、同社が業種別ソリューションとしてフォーカスしているのは、図1に示した7分野だ。これらの分野の顧客企業のDXに向けた取り組みを、パートナー企業と共に支援するのが同氏のミッションでもある。
ローブシャー氏に続いて説明に立った日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部製造営業統括本部インダストリーマーケティングマネージャーの鈴木靖隆氏によると、同社が製造業向けソリューションとしてフォーカスしているのは、図2に示した7分野。だが、両端の「働き方改革」と「持続可能性」は全業種に関わる取り組みなので、実質的には残りの5分野となる。
鈴木氏の話で分かりやすかったのが、同社の業種別ソリューション展開の“肝”であるリファレンスアーキテクチャについての説明だ。「当社が保持している技術やサービスを業種業態ごとに整備し、どの領域で何が使えるのか、そこにはどんな機能が必要か、システムとしてはどのように構成すればよいのか、といった3つの点を示したもの」というのがそれだ。
具体的には、図3に示したように、「ファンクションマップ」「アーキテクチャマップ」「パイロットインプリメント」の3つからなる。
鈴木氏はリファレンスアーキテクチャのインパクトについて、「DXの取り組みはスピードの速さが重要。お客さまにとってもパートナー企業にとってもリファレンスアーキテクチャを“たたき台”にしてもらえば、ソリューションを迅速に構築することができる。そのたたき台は、当社が常にアップデートする。こうした“三位一体”の体制でDXに挑むことができる」ことを挙げた。
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