「完全在宅勤務」の実施企業は1割 ポストコロナを見据えた働き方を確立するには?――NTTデータ経営研究所が調査(2/2 ページ)

» 2020年04月22日 13時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]
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コロナ終息後もテレワーク/リモートワークを「継続したい」は5割を超えるも、未導入企業では?

 テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業の従業員(39.1%)のうち、新型コロナウイルス感染症の終息後もテレワーク/リモートワークを「継続したい」と考えている人は、「現在と同じ頻度で利用したい」(23.0%)と「利用頻度は増やしていきたい」(29.8%)を合わせて52.8%に上ることが分かった。

 継続したい理由としては、「通勤時間や移動時間を削減できること」(79%)を挙げた人が最も多く、続いて、「自由に使える時間が増える」(30.1%)、「業務効率が高まる」(29.3%)、「オフィスで仕事をするよりも集中できる」(28.5%)が挙がった。

 一方で、「利用頻度は減らしたい」(25.8%)と「継続したくない」(34.2%)を合わせて、34.2%の人が「継続したくない」と考えていた。

 継続したくない理由は、「テレワーク/リモートワークでできる仕事には限界があること」(40.6%)、「上司・部下・同僚とコミュニケーションがとりにくいこと」(40.0%)が上位に挙がり、続いて、「仕事とプライベートの区別がつかないこと」(38.7%)、「社内の情報が確認しづらいこと」(34.8%)、「運動不足になること」(33.5%)、「職場の様子が分からない」(31.6%)が挙がった。

 NTTデータ経営研究所では、今後は、日常的にテレワーク/リモートワークを利用するケースが増える見込みであり、課題の内容も変わってくることが想定されるので、定点観測をしながら利用環境の整備をしていく必要があるとしている。

Photo テレワーク/リモートワークの継続意向(N=453)
Photo 継続したい理由(N=239)
Photo 継続したくない理由(N=155)

 テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の従業員(51.4%)では、「ぜひ利用したいと思う」(15.6%)と「少し利用してみたいと思う」(19.2%)人を合わせて、約3分の1に当たる34.8%の人が「利用してみたい」と回答していた。

 一方、「利用したくない」人は、「あまり利用したいと思わない」(10.3%)と「少し利用してみたいと思う」(14.6%)を合わせて24.9%だった。

 テレワーク/リモートワークに取り組めない理由としては、取り組んでいない企業の従業員の約3分の2に当たる65.9%の人が、「テレワーク/リモートワークで実施できる業務がない」と考えていることが分かった。

 次いで、「ICT環境が整備されていない」(18.0%)、「労務管理・人事制度などが整備されていない」(15.0%)、「紙ベースの業務が多い」(11.3%)といった利用環境が整っていないことを挙げている。

 また、「経営トップ層にテレワーク/リモートワーク導入への理解がない」と考える人も、1割を超えた(11.3%)。

Photo テレワーク/リモートワークの利用意向(N=595)
Photo テレワーク/リモートワークに取り組めない理由(N=595)

8割近くが不安を抱えるも、ライフスタイルの変化にメリットも

 2020年2月以降のライフスタイルの変化をみると、4割以上の人が「職場での飲み会」、3割以上の人が「友人や恋人と一緒に過ごす時間」や「家族と一緒に過ごす時間」に変化があったと回答している。

 特に「職場での飲み会」が減っている人は39.1%で、新型コロナウイルスの終息後も減ったままのライフスタイルが好ましいと思う人は2割を超え(22.3%)、反対に元の時間程度に増やしたいと思う人は16.8%だった。

 さらに「家族と一緒に過ごす時間」が増えている人は22.5%で、増えたままのライフスタイルが好ましい思う人は16.8%という結果になった。

Photo ライフスタイルの変化(N=1158)

 コロナ渦の現在、抱える不安・心配・悩みについては、全体の4分の3以上の人(75.6%)が「この状況がいつまで続くか分からない漫然とした不安」を、半数以上の人(53.5%)が「感染への恐怖」があると回答。「自分の給与カットが心配」との回答は20.4%、「自分の会社の事業継続が心配」との回答は17.2%に及んだ。

現在の不安・心配・悩み(N=1158)(複数回答)

“ポストコロナ”を見据えたテレワーク/リモートワークのための鍵とは?

 NTTデータ経営研究所では、今回の調査結果のまとめとして、調査対象がホワイトカラー職種であることから、他の職種と比べてテレワーク/リモートワークに取り組みやすい状況にあると考えられるとしながらも、テレワーク/リモートワークの利用は、今後一層の拡大が見込めると分析する。

 2020年2月以降は全国平均で毎月6.5%以上取り組み企業が増加していることや、現在テレワーク/リモートワークに取り組んでいない企業の3割以上の従業員が「利用してみたい」と回答していることなどをその理由としている。

 テレワーク/リモートワークに取り組んでいる企業も取り組んでいない企業も「テレワーク/リモートワークで実施できる業務に限界がある」ことを課題に挙げているが、早期のコロナ終息に向けた「人と人との接触を8割削減」するためには、テレワーク/リモートワークで業務が遂行できるように工夫することが、企業と従業員により一層求められていると指摘する。

 既存のテレワーク/リモートワークの取り組み企業の利用頻度を高めるには、必ず自宅で仕事をするようにとの企業側からの周知やサポートも必要かもしれない。出勤が必要な場合は、時差通勤の許可や奨励も「人と人との接触を8割削減」への企業側でできる有効な措置といえるとしている。

 また、テレワーク/リモートワークで実施できない業務は、「中止・延期」などの経営者や職場リーダーの英断と、サービスの提供を受ける発注者側の理解が最重要な観点になると分析。思い切った「中止・延期」は、今後の業務効率化につながる可能性もあり、決してマイナスの側面ばかりではないとみている。

 2月以降のライフスタイルの変化をみると、コロナ渦による変化が悪いことばかりではなく、「職場の飲み会」や「家族と過ごす時間」などのように、これまでよりも好ましい時間を過ごしている人もいる一方で、4分の3以上の人が漫然とした不安を抱えている現状から、長期的な視点では、感染リスクや経済損失に加え、今後一層、メンタルケアの重要性も示唆しているとしている。

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