個人的には「ワクワクするオモチャ」から「淡々と使う道具」になってしまったPCにおいても、同様のサービスを求めたいところです。コンシューマー向けはもちろん、エンタープライズ向けの需要はさらに大きいでしょう。これまで企業の端末は、情報システム部門などがキッティングした上で従業員に渡していました。実は、このようなキッティング作業を請け負うサービスが登場し始めています。
このような、デバイスの利用にまつわるもろもろを提供するのが「Device as a service」(DaaS)です。DaaSベンダーは端末の調達やキッティング、利用サポート、廃棄など、PCデバイスのライフサイクル全体をサービス化して注目を集めています。従業員はこれまで情報システム部に頼っていたことをベンダーの窓口に相談すれば直接やり取りでき、企業は管理コストを削減できます。
最近でいえば、少なくない組織が「Windows 10」のアップグレード対応に困っていました。対応端末への買い替えやリース契約に代わるもう一つの選択肢として、DaaSのメリットは大きいといえるでしょう。
PC調達の根本を変える「Device as a Service」リースとは何が違うのか? - キーマンズネット
DaaSはセキュリティ視点にもメリットがあります。まず、これまで情報システム部門が苦労していたキッティングや調達に関わる工数の削減に加え、故障に備えた予備機の管理などからも解放されます。その分ビジネスリスクに関わるセキュリティに注力できるでしょう。
さらに、この機に企業内のシステムをクラウドに移行できれば、さらに効果が上がります。もし現時点でクラウドストレージを活用していれば、デバイスの移行作業はほとんど必要ないはずです。特に現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、ナレッジワーカーのテレワークは「ほぼ必須」になっています。テレワークにおいて重要なのは、端末内に情報をなるべく残さない仕組みです。また、VPNを利用するにしても、必要なアプリケーションや電子証明書などが事前にインストールされている必要があります。
セキュアなテレワークを実現するためには、企業組織がそれに適した仕組みを用意していなければなりません。きっと、どんな組織も「ゼロトラスト」の考え方を取り入れるべきなのです。
デバイス管理に悩む企業にとって、DaaSは強い味方になるかもしれません。セキュリティの識者と雑談していると「さまざまな新しい攻撃手法が登場するたびに、新しい対策が必要になる。しかし今、自分たちが持っているものを管理できなければ、対策のしようもない」という話になりがちです。DaaSとともに資産管理ツールを活用し、エンドポイントを把握するところまで一気に展開できれば心強いでしょう。
できれば、似たようなサービスを個人にも展開してほしいと思っています。アメリカではデバイスとOS、「Microsoft 365」などをまとめた「Surface All Access」やスマートの保障とアップグレードを提供する「iPhone Upgrade Program」などがあるのですが、日本では展開されていません。価格やサービス内容、最新機種への乗り換え条件などによっては、ぜひ活用したいと思っているのですが……。
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門 「木曜日のフルット」と学ぼう!〈漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ〉』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる。
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