攻めのデータ活用が活発化するも、多くの企業が直面する「複雑な課題」とは?――NTTデータ経営研究所(2/2 ページ)

» 2020年05月14日 10時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]
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データ活用で企業が直面する課題とは? 複合的な要素の理解が必要に

 また、データ活用の取り組みでは、その特性上、分析手法やITなどの技術面だけではなく、「戦略・計画・管理」「業務プロセス」「人材・スキル」「企業文化」といった複合的な障壁に直面していることが明らかになった。

 さらに、そうした課題に対する「対応策」としては、万能的な処方箋といえるものはないことも分かった。企業の内部・外部環境やデータ活用の成熟レベルなどに応じた、多面的な打ち手が必要性になるという。

 データ活用の取り組みで抱える課題については、「戦略・計画・管理」「業務プロセス」「人材・スキル」「システム・データ」「企業文化」の5つのカテゴリーで回答を得たところ、目的別、業種別での大きな傾向差はみられなかった。大局的には、各社とも同様の課題感を抱えている傾向が強いものと推測している。

 データ活用における課題としては、図6の通り、「データ活用が業務として定着しない(1位)」「スキル・経験の属人化(4位)」「本業の多忙(5位)」などの業務プロセスや、「ビジネス面、データサイエンスのスキル不足(2、3位)」などの人材・スキルに関する現場レベルの課題が上位を占めた。

Photo 図6:データ活用における「課題」の回答率上位15項目(全38項目中:複数回答)

 一方、6位以降は「取り組みの評価手法、目標指標、目的が不明確(6、7、9位)」などの戦略・計画・管理や、「上層部や現場がデータ活用の意義を理解しない(10、14位)」などの企業文化に関する部門全体や全社レベルの課題も複数含まれていた。

 一般的に、データ活用のテーマでは、分析手法やツール、データの取得・管理・加工などに焦点が当たることが多いが、上記の回答結果から、データ活用における障壁は、技術的な観点以外の複合的な要素が絡む傾向にあると分析している。

 例えば、小売業で営業企画部門が店舗の販売傾向に基づく顧客戦略立案のためにデータ活用に取り組むようなケースでは、初期のトライアルで、どのような販売結果や数値で検証を成立させるべきか、限られたリソースの中で既存業務とデータ活用に関わる業務をどう両立させるかといった点で苦心することが多いと推測する。

 また、実施後の社内関係部署や上層部への説明や、本格展開に向けた承認プロセスでは、既存の顧客戦略や店舗運営計画との整合性の確保や、上層部と現場にデータ活用の必要性、重要性を理解してもらうことが障壁となるかもしれない。

 同様に、本格展開の着手までこぎ着けたとしても、既存の店舗オペレーションやシステムにデータの抽出や連携をどう組み込むべきか、データ活用の企画や分析を恒常的に回すためにはどう人材・スキルを確保するかなど、担当者の頭を悩ませる要素は無数に存在する。

 本来の目的である「顧客戦略や販売戦略の高度化のためのデータ活用」の定着には、ビジネスにおける複合的な障壁を理解した上で取り組んでいく必要があるとしている。

データ活用の課題に有効な対応策とは? “万能処方箋”はない!?

 課題に対する対応策として、「実施しており、効果がある」との回答の上位20項目を1位から降順で集計した結果は、図7の通り。併せて、各対応策の「効果あり」「効果なし」「実施しているが効果は不明」の回答割合をグラフ化している。

Photo 図7:課題に対する「対応策」 “効果あり”の回答率上位20項目(全41項目中:複数回答)

 留意すべきは、「効果あり」の上位ではあるものの、一部、「効果なし」との回答の割合が高い項目も含まれる点だ(図7内の太字部分)。

 戦略・計画・管理では、「上層部(トップマネジメントレベル)による方針決定(2位)」で、「効果なし」の回答割合が高い。

 同様に、業務プロセスでは「データ活用担当者の専任化(3位)」や「データ活用での外部リソース活用(7位)」で、人材・スキルでは「社内外からのデータ活用人材の異動・採用・アサイン比率見直し(9、10、20位)」で、システム・データでは「データ項目の再定義・入力や管理のルール整備(8位)」や「取得範囲拡大によるデータ量増大(12位)」で、「効果なし」の回答割合が高かった。

 これらの項目は、「一見、効果が高そうに思えるが、実施した場合につまずきやすい対応策」ともいえるとしている。

 特に着目すべきは、データ活用業務におけるスキル・リソースの補完を狙って多くの企業で実施されているであろう「データ活用人材の専任化(3位)」や「社内外からのリソースの調達(異動・採用・外部他委託)(7位)」について、回答者の3割前後が「効果なし」と回答している点だ。

 つまり、データ活用における障壁は複合的な要素が絡む傾向にあると前述したが、それらの対応策として、いわゆる“万能処方箋”のようなものはないといえる。

 具体的な打ち手としては、取り組みの目的と活用するデータや手法や、企業の規模、組織構造、文化といった内部・外部環境、データ活用の成熟度などによって、留意すべき障壁と解消策が異なってくるため、これらに応じた、多面的な打ち手が必要になるという。

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