では、日本企業のDXに向けた課題に目を向けよう。
図2は、企業が事業活動において活用しているデータの種類について分析したグラフである。
5年前に実施された同様の調査と比較すると、POSやeコマースによる販売記録、MtoM(マシンツーマシン)データを含む自動取得データの活用が大きく進展しており、各企業におけるIoTの導入が進んでいることが見て取れる。
また、電話などの音声データの活用も進んでおり、白書は「この5年でデータ分析による企業経営の高度化が進められていることがうかがえる」と分析している。
図3は、分析に用いるデータの入手元を業務領域別に見たグラフである。
全体としては「社内データ」が多いものの「外部データを購入」しているケースも3割程度ある。業務領域別では、データの入手元には大きな差異は見られないものの、「製品・サービスの企画、開発」「マーケティング」において、外部データを購入している割合がやや高くなっている。
図4は、データに基づく経営という観点から、データ活用に関連した取り組みの実施状況を表したグラフである。
データ活用に関連した取り組みとして「データ分析人材の採用」「データ活用戦略の策定」「データ分析に基づいた経営判断の実施」を挙げた企業がそれぞれ4割程度となっており、白書は「徐々にデータに基づく経営が重要視されてきていることがうかがえる」との見方を示している。
ただ、筆者は図4の結果について「全体としてまだまだ水準が低いのではないか」との印象を受けた。
最後に図5は、データ活用効果の達成率を業務領域別に見たグラフである。DXに向けた効果予測といってもいいだろう。
データ活用効果の達成率とは、各業務領域でデータを活用している企業のうち、データの活用で「効果があった」と回答した企業の割合を計算したものだ。
結果は、「生産・製造」(67%)の達成率が最も高く、次いで「物流・在庫管理」(65%)の順となった。この結果から、白書は「これらの領域ではデータを活用した効率化や最適化の取り組みが効果として表れやすいと考えられる」と述べている。
筆者はこの結果から、日本企業のDXに向けた課題が浮かび上がってきていると考える。というのは、達成率の低い「経営企画・組織改革」「マーケティング」「製品・サービスの企画、開発」といった業務領域に対し、日本企業がDXで効果を上げるのは難しいということを示唆しているからだ。逆にいえば、これら3つの領域でいかにDXを推進し、成果を上げていくか。この点が日本企業のチャレンジである。
ちなみに本連載では、情報通信白書について、令和元年版、平成30年版、平成29年版、平成28年版も独自の解説とともに取り上げてきたので、ご興味があれば参照していただきたい。
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