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» 2020年10月19日 10時00分 公開

紙、電話、FAX撲滅なるか? アットホームに聞く不動産業界ペーパーレス化の現在地点

「正確な情報は地元の不動産屋に足を運ばなければ得られない」――。日本では長く当たり前とされてきたこの常識を変えるには何が必要か。紙、電話、FAXを前提としてきた地場の仲介業者の業務支援を基盤に業界全体のDXを仕掛ける企業の1社に話を聞いた。

[原田美穂,ITmedia]
1 アットホーム 基幹サービス開発部 部長 原 雅史氏

  「いまある業務をとてつもなく楽にしておかなければ、今後、業界は立ちゆかなくなる」――。利用者の利便性が高まる一方で、仲介業者らの業務負荷は年々増加傾向にあるという不動産業界。現在も多くの事業者が紙と郵便、電話、FAXを標準のツールとして利用する状況だ。

 だが、いまはコロナ禍をきっかけに、あらゆる業界で脱ハンコ、ペーパーレスの検討が進む状況だ。業法による規定やステークホルダーの多さ、小規模な事業者が多いという特徴を持ことから、デジタル化が進みにくかった不動業界も同様だ。数年前から自社顧客企業の業務改革を支援してきたアットホームも、不動産取引に関わる手続きのデジタル化の進展による業界の変革に期待を寄せる。

 「街の不動産会社が活性化し、エンドユーザーにより良い『住まい探し体験』を提供できるようになることが、われわれの発展にもつながります」と語るのは、アットホームの原 雅史氏(基幹サービス開発部 部長)だ。

 「業務が効率化することで、業界全体の人気が底上げされれば、人材も集まるようになるはず。不動産業界全体の活性化を推進することが、私たちの最終的な狙いです」(原氏)

なぜ「正確な情報は地元の不動産屋に足を運ばなければ得られない」が常識になっているのか

 同社は消費者向け不動産情報サイト「アットホーム」で知られるが、不動産情報サイトだけでなく、不動産会社間情報流通や不動産業務支援事業も手掛ける。特に不動産業務支援事業は「VR内見・パノラマ」や「間取図作成ツール」など、ITを活用したサービスを続々と展開することでも知られる。

2 スマートシリーズの全体像。物件確認から内覧、契約までをデジタル化する(出典:アットホーム)

 不動産業界は紙と電話、FAXを使った手続きが非常に多い。AIで物件確認を自動化する「スマート物確」のようなサービスが必要とされるのも、最新情報のシステム反映には入力の手間がかかるためだ。担当者が書類の情報をシステムに登録するまでにタイムラグがあることから、参照したデータが正しいかどうかを確認するには、物件情報を取り扱う会社に電話で問い合わせなければならない。問い合わせをする側の手間ももちろんだが、問い合わせ対応の人員確保も必要だ。

 アットホームは、2017年9月に物件問い合わせの対応を自動化する「スマート物確」をスタートして以降、全国の加盟店向けの業務効率化支援サービスを「スマートシリーズ」として展開する。

 「この数年間、私たちアットホームは、加盟店である地域の不動産会社の皆さんが事務作業に忙殺されず、地元に根付いた活動に注力して質の高い顧客コミュニケーションを進めるための支援策を追求してきました。不動産会社の皆さんが生産性を高め、サービス品質を高めることがわれわれの成長にもつながると考えています」原氏はスマートシリーズの狙いをこう語る。

 スマートシリーズの中でも、なつ印や製本、郵送などの手間がかかる契約手続きをペーパーレス化し、電子サインを組み込んだのが「スマート契約」サービスだ。先行して採用した企業で非常に高い効果を出しているという。不動産取引における契約業務は関係者が多い上、前述のようにFAXと電話が中心の業界だ。一部の企業がITを活用したとしても、取引先や顧客の双方が参加しなければ進まないことも多いが、まずは不動産会社の従業員の業務効率向上を目指し、ある「準備」と組み合わせて契約業務の効率化に当たったのだという。以降でその詳細を見ていく。

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