ホームセンターとITを融合 カインズが仕掛けたデジタル戦略とその取り組み

カインズは、2017年にデジタル戦略本部を立ち上げた。「ホームセンター」と「IT」という全く異なる分野を融合して実績を出し続けるデジタル戦略本部の担当者に取り組みをきいた。

» 2020年10月20日 07時15分 公開
[田渕聖人ITmedia]

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 ホームセンター事業を手掛けるカインズは、2017年にデジタル戦略本部を立ち上げた。2020年1月には、東京(表参道)にデジタル戦略本部の拠点として「CAINZ INNOVATION HUB」を設置し、システム開発やIT業務の本格的な内製化に着手している。IT小売事業に乗り出した同社のデジタル戦略とそれに向けた取り組みを担当者が語った。

 本稿は2020年10月14、15日に開催されたオンラインイベント「Salesforce Live for Retail & Consumer Goods」の講演「CAINZのDXを支える開発チームのつくり方〜エンジニア採用で目指すユーザー目線の高速システム開発〜」の模様をレポートする。

「IT小売宣言」発令 ホームセンターを改革せよ

 デジタル戦略本部の発足は3年前、カインズ会長の土屋裕雅氏がAmazon Web Servicesのグローバルカンファレンス「AWS re:Invent 2017」に参加したことがきっかけだ。同イベントで米国小売業界の急速なデジタル化を目の当たりにした土屋氏は、翌年の年頭朝礼で「IT小売宣言」を打ち出した。「ITを利用して顧客により良いサービスを提供する」というのが同宣言の趣旨だ。

カインズのデジタル戦略本部本部長の池照直樹氏

 これには、米国小売業界の変化はもちろんのこと、日本の小売業界の変化も大きく関係している。カインズのデジタル戦略本部本部長の池照直樹氏は「2017年当時の日本は、各地で小売業者の店舗数が大幅に増加したことで、各社の『陣取り合戦』のような状況に陥っていた。このため従来のように店舗を拡大する手法で利益を上げることが困難になってきていた」と説明する。

 小売業者は、競合の増加に伴い既存店が伸び悩む一方、新規店舗を出店しなければ事業が成長できないというジレンマを抱えていた。

2017年にカインズが抱えていた課題(出典:カインズ)

 カインズは、こうした背景の中で経営改革に踏み切った。SPA(製造小売)型のビジネスモデルに舵を切った第二創業期から、「次のカインズをもう一度作り直す」ための第三創業期に向け、デジタル戦略を3本柱の一つに位置付けた3カ年中期経営計画「PROJECT KINDNESS」を策定した。既にIT業界で名の知れていた池照氏が2019年に同社のデジタル戦略本部本部長に就任したのも戦略の一環だ。

 このような取り組みを進める上で「どんなサービスをしたら喜んでもらえるのか」をコンセプトに同社が策定した4つの戦略が下図になる。

カインズの全社戦略(出典:カインズ)

 「物を買うというのは楽しい体験だ。一方で面倒なこともたくさんある。面倒な要素を減らし楽しさを増やしていくというのが当社の全社戦略だ」(池照氏)

スピーディーな開発は組織作りから デジタル戦略に沿ったカインズの組織体制とは

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