データを集めて店舗で「実験」 ワークマンのデータ至上主義の経営戦略に迫る【特集】DX人材を再定義する 人材育成から読み解く企業のDX戦略(3)

特集第3回は、ワークマンの企業事例を紹介する。新業態へ移行するためにワークマンが掲げた企業戦略と、それに向けた全社的なデータ分析人材の育成手法を聞いた。ワークマンの信念が伝わる経営からDX人材を考える。

» 2020年12月16日 07時00分 公開
[田渕聖人ITmedia]

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 特集「DX人材を再定義する 人材育成から読み解く企業のDX戦略」は、ユーザー企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に必要な人材の育成に焦点を当てる。第3回目となる本稿は、作業服や作業関連用品の販売事業からアパレルの展開までを手掛けるワークマンの企業事例を紹介する。

 これまでの作業服市場から、アウトドア製品も取り扱う「WORKMAN Plus」や同社初の女性客主体の店舗「#ワークマン女子」といった新業態のアパレル店舗を開拓するためにワークマンが掲げた企業戦略と、戦略の実行に当たって全社でデータ分析人材を育成した手法を改革のキーマンに聞いた。

作業服市場が飽和する 新業態への移行を迫られたワークマンの決断

ワークマンの土屋哲雄氏(専務取締役)

 ワークマンのDX推進を語る上で外せない人物が同社の専務取締役である土屋哲雄氏だ。同氏は現在、トランスフォーメーションディレクターとして全社のデジタル改革を主導する。ワークマンのDXは、2012年に同氏が創業者に呼ばれる形でCIO(最高情報責任者)として入社したところから始まった。

 「入社後はまずCIOとして作業服市場の調査に着手した。2012年当時、680〜690程度の店舗数だったワークマンが、5〜10年後に1000店舗以上に拡大できるかどうかを調査する必要があった。1000店舗になると情報システムの導入規模も変わってくるためだ」(土屋氏)

 調査の結果、意外な結果が出た。将来的に1000店舗を出店し売り上げが1000億を超えた時点で作業服市場が飽和することが明らかになったのだ。土屋氏によると、社内の人はこうした問題に対して良くも悪くも皆危機感が薄く、1000店舗を出店したその先の未来を誰も考えていなかったという。

 「作業服市場のシェアの大部分を自社が占めていたことも危機感が持てない原因だった。CIOとしてワークマンの将来を見据えるとかなり不安があった。そのためCIOの立場から率先してトランスフォーメーションを主導して新業態を作る必要があった」(土屋氏)

 土屋氏の立場はまさに、特集第2回で経済産業省の和泉憲明氏が語ったように、CIOがビジネス変革をけん引するCDO(Chief Digital Officer)を兼務するケースだろう。

 新業態への移行を進める上で同氏が掲げた経営方針が「データ経営」と「しない経営」だ。「しない経営」は、「社員にストレスをかけない」や「ノルマや期限を設けない」など徹底してムダを省くことで経営拡大を図る方針だ。一方の「データ経営」は、客層拡大に向けて飽和した市場から新業態へ移行し、全従業員でデータ分析に基づいた経営を進めていくという方針だ。本稿は後者にフォーカスする。

全従業員でデータ分析研修を実施 ワークマンの「本気度が伝わる」経営とは

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