保険業界にもDXの波が押し寄せる。三井住友海上は「RisTech」という新しい取り組みにリソースを投下する。彼らが目指す新しい価値創出のアプローチの一端を聞いた。
MS&ADホールディングスのインシュアランス部門で中核を担う損害保険業大手、三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)は、「リスク×Tech」による新しい事業開発を目指してデータ分析環境の整備やデータ分析人材の育成に積極的な投資を進めている。同社が取り組む「リスク×Tech」と「データ駆動型組織を目指した人材育成」はどういったものだろうか。
※本稿は、データ分析プラットフォームを提供するTableau Softwareが主催したオンラインイベント「Tableau Live」(2020年11月26日開催)におけるユーザー事例講演を基に内容を再構成した。
講演前半に登壇した三井住友海上の木田浩理氏(プリンシパルデータサイエンティスト)は多くの業界でマーケティング分析を手掛けてきたデータサイエンティストとしての経歴を持つ。三井住友海上に参加したのは2018年のことだ。木田氏のミッションの一つは保険データの新たな活用にある。損害保険会社が持つリスク情報を基にした「RisTech」によって新しい市場の創出を目指している。
RisTechとは、「リスク」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語だ。同社が持つ損害保険のデータをITを生かして分析、可視化して、新たな価値の提供を目指す。RisTechプロジェクトが本格化したのは2019年5月のことだ。プロジェクトはアクセンチュアと共同で推進する。損害保険会社が保有する情報は幅広い。契約者の属性もあるが、保険請求に関連してさまざまな事故発生の情報の記録がある。住宅や自動車などの所有資産に関する情報も必然的に集まってくる。
木田氏はRisTechの価値提供パターンとして下図の3つを想定する。以降で順を追ってみていこう。
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