社内の紙の業務をなくすのと違い、全国の取引先からの注文や受発注のデジタル化となると関係者との合意形成が難しい。グループ全体のシェアードサービスセンターが取り組む業務改革は経営課題にも大きな効果をもたらした。
紙の業務をデジタル化すれば、業務効率向上だけでなく、従来就労が難しい環境にあった人材も能力を発揮できる。デジタル化推進は生産性向上だけでなく、多様性を受け入れる働き方改革にもつながることを示したのが花王だ。
日本IBMが4月15〜16日にオンラインで開催した「The DX Forum 3つのポイントでひも解くデジタル変革の真髄」ではさまざまな企業がDXの実践とその成果を発表した。本稿はその中から花王グループの取り組みを紹介したい。登壇したのは花王ビジネスアソシエ 会計サービスグループ 部長 上野 篤氏だ。上野氏は過去、ITmedia エンタープライズの取材にも応じたことがある。同社は現在も取引先企業とともに業務DXを推進し、高い成果を収めている。
1887年に創業し、化粧品や日用品、スキンケアおよびヘアケア、ヒューマンヘルスケア、化学などの事業を世界100以上の国や地域で展開する花王グループ。2020年12月期の売上高は1兆3820億円、連結従業員数は3万3409人という規模だ。直近では、参加の美容カウンセリング会社を統合し、ブランドの世界観の伝達と愛用者の維持拡大に向けた取り組みを強化する。また、ジェンダーに関する情報開示と男女平等への取り組みが評価され、ブルームバーグの「2021年 男女平等指数」に選定されている。
花王グループは、2019年4月にESG(Environmental Social Governance)戦略として「Kirei Lifestyle Plan」(キレイライフスタイルプラン)を策定し、その中の重点的な取り組みテーマの一つとして「受容性と多様性のある職場」を掲げてきた。また、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進を含めたESG活動をグローバルに展開し、社会のサステナビリティ貢献にも取り組む。
現在は代表取締役 社長執行役員の長谷部 佳宏氏の下「豊かな持続的な社会への道を歩む」とのビジョンを掲げ、中期経営計画「K25」推進中だ。K25の方針には「持続的社会に欠かせない企業になる」「投資して強くなる事業への変革」「社員活力の最大化」がある。中でも「社員活力の最大化」に向けた施策が今回の講演のテーマだ。
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