エンタープライズIT需要は今後どう動くか――富士通、NEC、NTTデータの受注状況から探るWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2022年02月07日 10時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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NECとNTTデータの受注実績は増加へ

 NECが2022年1月31日に発表した同四半期の受注状況は全社で前年同期比7%増と、4四半期ぶりの増加となった。分野別の増減やその要因は表2の通りである。業種別の受注動向で注目したいのは、公共向けなどを除く主要な業種を合わせた「エンタープライズ」が同10%増と伸長したことだ。

Photo 表2 NECの各分野における直近四半期の受注状況(出典:NECの発表資料)

 オンラインでの発表会見で説明に立った同社の森田隆之氏(社長兼CEO)は、このエンタープライズ分野の動きについて次のように述べた。

 「第3四半期は製造業や流通・サービス業向けの伸長が目立ったが、この分野は第1四半期からの9カ月累計でも金融業向けと共に好調だった。その要因はそれらの分野でITサービスの受注が好調に推移したからだ」

Photo NECの森田隆之氏(社長兼CEO)

 これまでの推移を見ると、「エンタープライズ」は今回で4四半期連続で伸長しており、前述したように受注全体が4四半期ぶりに増加した原動力にもなっているようだ。

 富士通と同様に、会見の質疑応答でCOVID-19流行第6波の影響について問われた同氏は、「現在、第6波の真っ直中ではあるが、ビジネス環境からすると、かつてのようにどう対処すればよいか分からなかった時とは違い、この2年で対処の仕方を学んできたと実感している。もし、第6波が今後さらに猛威を振るうようになれば話は別だが、現状ではビジネスに大きな影響はないと考えている」と答えた。

公共・社会基盤や金融が軒並み好調、EMEAと中南米でも成長を示すNTTデータ

 NTTデータが2022年2月4日に発表した第1四半期から第3四半期までの9カ月累計の受注状況は、合計で前年同期比9.1%増の1兆7204億円となった。表3に示した分野別では、公共・社会基盤が前年同期比543億円増で比率だと15.5%増、金融が同557億円減で比率15.6%減、法人・ソリューションが同205億円増で比率8.2%増、北米が506億円増で比率19.3%増、EMEA(欧州・中東・アフリカ)と中南米が739億円増で比率22.3%増だった。

Photo 表3 NTTデータの各分野における直近四半期までの9カ月累計の受注状況(出典:NTTデータの発表資料)

 同社が会見で説明したのは9カ月累計だけだったので、第3四半期だけの受注状況を示した富士通とNECの実績とは単純に比較できないが、表3の下段に示した分野別の傾向はすり合わせることができるので参照していただきたい。ただ、同社は公共・社会基盤や金融の割合が比較的高いので、傾向として個別の動きも見られるようだ。

 オンラインでの発表会見で説明に立った同社の藤原遠氏(副社長)は、個別の動きとして前年同期に獲得した大型案件の反動などにより大幅な減少となった金融分野について、「通期の業績予想に織り込み済みで想定通りだ」と述べた。

Photo NTTデータの藤原遠氏(副社長)

 また、会見の質疑応答で第6波の影響について問われた同氏は、「現時点では業績に影響を及ぼすとは考えていない。この2年間のコロナ禍でビジネスの進め方もだいぶ慣れてきた。それはお客さまも同じで、大規模な新規案件の商談もリモートによる交渉だけで成立するケースも出てきている」と答えた。

 以上が、直近の四半期決算で明らかになった3社の受注状況である。全体としての増減の数値だけを見ると、富士通は「足踏み」、NECは「堅調」、NTTデータは「好調」といった印象があるが、エンタープライズ分野については3社とも好調に推移しているようだ。COVID-19流行の第6波の影響については、3社とも「現状で影響はない」と明言。第6波が収まる方向になれば、ニューノーマルでのDXの取り組みが本格化する機運も感じる。その傾向を捉えるためにも、受注状況には今後も引き続き、注目していきたい。

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