では、図2の内容を踏まえてデータ基盤を構築し、データ活用を軌道に乗せるためにはどうすればよいのか。広木氏は3つのステップを挙げた(図3)。
ステップ1は、「データをデータ基盤に上げるモチベーションのある初期ユーザーを見つける」ことだ。広木氏がまずこの点を挙げるのには、次のような理由がある。
「データ基盤を構築してデータ活用を図ろうと取り組む企業の中には、データ基盤は整備したものの、事業部などの現場を巻き込んでいないことから、肝心のデータが上がってこないケースも見受けられる。また、データ基盤を効果的に活用するためには入出力の標準化を図る必要があるが、個別の業務データに対応するためにも素早く作業を進めていくことが重要になる」(広木氏)
つまり、データ基盤の構築は情報システム部門だけでなく、社内の各現場からデータが素早く上がってくるようにしないと「使えるデータ基盤」にならないということだ。だからこそ、「モチベーションのある初期ユーザーを見つける」ことが大事なのだと同氏は強調した。ちなみに、ステップ2はステップ1を足掛かりにデータ基盤をどう増強していくか、ステップ3はステップ1と2で作ったデータ活用パターンを社内でどう横展開していくか、といった内容である。
こうしてみると、上記の3つのステップはオーソドックスな内容のように見て取れるが、広木氏は「最初が肝心だ。データ基盤づくりは現場のエンドユーザーを巻き込んで着実に取り組むことが大事だ。遠回りのように見えるが、結局はこれがデータジャーニーへの一番の近道だ」との見方を示した。同氏のこの言葉はまさしく勘所である。
図4は、BeeXが提案するデータジャーニーの進展を表したものである。あらゆるデータを集約してビジネス要件に応じた分析を行うことで、データドリブンな企業活動を実践する。それが、新たなビジネスモデルの創出やバリューチェーンの変革といったDXの実現につながるという構図だ。
広木氏はデータジャーニーの話の最後に、データ基盤を構築するまでの8つのレベルについて説明した。図5がその内容である。レベル1から8までそれぞれの状況に応じて次のレベルに上がるために必要なアクションがあり、同社ではレベルごとに適切な支援を提供する。
興味深い話だったので、会見の質疑応答で「データドリブン経営を実践する企業はまだまだ少ないように感じているが、広木さんの感触はどうか」と聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。
「先進的な企業は出てきているものの、全体としてはまだデータ活用の部分最適にとどまっているようだ。また、データ基盤づくりにおいても現場を巻き込む取り組みが足らないように感じる。逆に言うと、大いなるポテンシャルがあるので、これから当社もしっかりと支援していきたい」(広木氏)
BeeXによるデータジャーニーへの提案から、データドリブンへの取り組みに必要な要素が明確になったのではないか。テクノロジーや仕組みだけでなく、文化や人(エンドユーザー)も大きなインパクトを及ぼすとの見解が印象的だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.