NTTデータが提言 サプライチェーン強靭化には「デジタルツイン」が重要サプライチェーン×DX(1/3 ページ)

コロナ禍、甚大化する自然災害、米中貿易摩擦、サプライチェーンを狙ったサイバー攻撃――。これまでの環境に最適化されたシステムの見直しを余儀なくされるような変化が起こる中、サプライチェーン強靭化のために何が必要か。IT技術はそのためにどのような貢献ができるのか。

» 2022年03月25日 13時00分 公開
[田中広美ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 コロナ禍、甚大化する大雨などの自然災害、米中貿易摩擦、サプライチェーンを狙ったサイバー攻撃――。サプライチェーンは間断なくさまざまな途絶リスクに見舞われている。サプライチェーンが世界中に張り巡らされている今、レジリエンス(復元力、回復力)が大きな課題となっている。

 通常時の条件に合わせて最適化されたシステムが見直しを迫られるような変化が起きたとき、その変化に迅速に適応し、製品を供給し続けるために何が必要なのだろうか。そして、IT技術やテクノロジーはレジリエンス強化にどのように貢献するのか。

 今回はNTTデータ 製造ITイノベーション事業本部で話を聞いた。製造ITイノベーション事業本部は自動車や飲料、機械・重工業、食品、製薬、モビリティとさまざまな製造業をその名称の通りITイノベーションの側面から支援している。

 杉山 洋氏(執行役員 製造ITイノベーション事業本部長 コンサルティング&ソリューション事業本部長)はサプライチェーンの途絶リスクとなる変化について、「変化には大災害のように突発的に起こるものと、米中貿易摩擦のようにその変化が恒常的に続くものがある」と話す。

 「これまでデジタル技術はコスト最適化であったり人々の利便性を上げたりしてきたが、現在のグリーンを含むサスティナビリティへの対応を考えると、デジタル技術がサプライチェーンにおいて果たすべき貢献は最適化や利便性という観点の取り組みのみではないと考えている」(杉山氏)

サプライチェーン全体での活用が進む「デジタルツイン」

 ここから具体的な「変化」への対応の在り方を見ていきたい。足元の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大がサプライチェーンに与える影響について、杉山氏は「サプライチェーンの接点が物理的に分断されたこと」を挙げた。「こうした全世界で同時発生するような事態をわれわれは十分に想定できていなかったのではないか」(杉山氏)

 世界的なパンデミックとしては20世紀初頭のスペイン風邪以来であり、今後同様の事態が起こる可能性は低いかもしれないが、人の移動が活発化した現代、パンデミックは起こりやすくなっているとの指摘もある。

 サプライチェーンは同様の事態に備えて何をすべきだろうか。「各工場や物流、原料のサプライヤーといった個々の企業や設備で何が起きているかをしっかりとデータ化(一元的に見える化)することが必要だ。それによって何か変化が起きたときにわれわれが貢献できる部分もあるのではないか」(杉山氏)

デジタルツインの「全体見える化」でできること

 杉山氏が指摘する、各セクションが管理している内容をデータ化によって全体的に「見える化」するのが「デジタルツイン」だ。IoT(モノのインターネット)などを利用して収集したデータをもとに作ったデジタルの「複製」によって、シミュレーションやモニタリング、予測を可能にする。

 デジタルツインは主に製造工程の最適化を目的として、需要予測や予測モデルの構築、計画業務などに使われてきたが、現在、デジタルツインをサプライチェーン全体で活用する機運が高まっている。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ