富士キメラ総研が国内のデジタルID、認証ソリューション市場を予測 今後注目すべき「4市場」は?

富士キメラ総研は、国内のデジタルIDおよび認証ソリューション市場の調査結果を発表した。オンライン認証やキャッシュレス決済などの増加を背景に拡大が続く同分野の中で、同社が特に注目する4つの市場とは。

» 2022年07月25日 07時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 富士キメラ総研は2022年7月21日、国内のデジタルID、認証ソリューション市場の調査結果を発表した。同調査結果によると、2022年の市場規模は対前年比12.1%増の9231億円に上る見込みだ。2027年には、対2021年比80.4%増の1兆4863億円に拡大すると予想する。

拡大の追い風続く中、特に注目すべき「4つの市場」は?

 富士キメラ総研によれば、国内のデジタルID、認証ソリューション市場拡大の背景には、オンライン認証やキャッシュレス決済の増加、施設の立ち入りやデータの持ち出しなどを防ぐ物理的なセキュリティ需要の高まりがある。

 同社はこの市場を認証ソリューションとオンライン認証基盤、認証アプライアンスの3つに分類し、各市場の今後の見通しを次にまとめた。

認証ソリューション市場

 認証ソリューション市場の2022年の規模は、対前年比15.2%増の5410億円に達する見込みだ。キャッシュレス化のニーズの高まりを受けて規模の大きいウォレットサービスや決済プラットフォームといった決済関連ソリューションが伸長すると富士キメラ総研はみている。

 キャッシュレス化は今後も進み、ウォレットサービスなどを通じて得られたID別の購入情報を分析することで、商品開発や販促に活用するデータ分析サービスの展開が予想される。同社は、決済関連ソリューションについて今後も堅調に伸びるとみる。また、搭載車種の増加などを背景にドライバー認証システムが大きく伸び、2027年の市場規模は対2021年比2.1倍の9638億円に成長する見込みだ。

オンライン認証基盤市場

 オンライン認証基盤市場の2022年の規模は、対前年比12.3%増の501億円の見込みだ。2027年は対2021年比62.3%増の724億円と予測する。同市場は、ID活用に向けた認証基盤として拡大しており、国際標準規格や法制度への対応ニーズによって全ての品目が伸長する見込みだ。富士キメラ総研は「不正検知や本人認証といったセキュリティ向上に対する需要の増加も(この成長を)後押しする」と指摘する。

 政府や企業がID活用を進める中、オンライン認証基盤市場は今後、ID管理のインフラとして重要度が増す見込みだ。富士キメラ総研は、オンライン認証プラットフォームについて、管理するIDを他サービスの認証に活用する新ビジネスの展開を予想しており、「オンラインで本人を確認するeKYC(electronic Know Your Customer)も大きく伸びる」とみる。

認証アプライアンス市場

 認証アプライアンス市場の2022年の規模は、対前年比7.3%増の3320億円となる見込みだ。富士キメラ総研は、2027年は対2021年比45.5%増の4501億円に達すると予想する。同市場は生体認証や身元確認、本人を認証する専用機器やサービスによって構成されている。2022年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が弱まり、行動制限の緩和によって実店舗での消費活動が活発化することや、設備投資が回復に向かうことからQRコードリーダーや決済端末、POSシステムが伸びる見込みだ。これらの品目は、キャッシュレス化の進展に伴って今後も伸長するとみられる。

10倍以上伸びる市場も

 富士キメラ総研は、今後の注目市場としてドライバー認証システムや決済プラットフォーム、ID共通管理プラットフォーム、eKYCの4市場を挙げる。各市場の今後の見通しは次の通りだ。

ドライバー認証システム

 ドライバー認証システムは、車に搭載して顔や指紋によって個人を認証するシステムだ。富士キメラ総研は、2022年は顔認証システムの9割強が運転傾向の分析による事故防止を目的に導入されるとみる。高級車を中心に顔認証システムを標準搭載する車種が増えており、今後はシステムの低価格化によって搭載車が増加すると予測する。後付け機は現在は社用車が中心だが、富士キメラ総研は、「今後は個人向けにも普及し、引き続き市場拡大をけん引する」と予想する。同市場の2022年の規模は対前年比91.9%増の357億円、2027年は対2021年比10.8倍の2014億円に急成長する見込みだ。

決済プラットフォーム市場

 決済プラットフォーム市場は、加盟店と決済代行事業者や金融機関、決済サービス提供事業者などをつなげるネットワークの構築/運営、中継サービス/スイッチング、売上データ処理などのサービスを含む。

 政府のキャッシュレス推進によって、クレジットカードやQRコード決済の利用が広がっており、複数の決済方法への対応が進む。COVID-19の影響でキャッシュレス決済を選択する消費者が増えており、同市場は堅調に推移している。中でもクレジットカード決済の取扱高の規模が大きいことから、決済ネットワークサービスが今後も同市場をけん引する。クラウド型決済プラットフォームはマルチ決済への対応が進んでおり、今後の伸びが期待される。QRコード決済プラットフォームはインセンティブの付与を背景に利用者が増加しており、堅調に伸びている。富士キメラ総研は、同市場の2022年の規模を、対前年比13.9%増の2674億円、2027年は対2021年比67.5%増の3931億円と予測する。

ID共通管理プラットフォーム市場

 ID共通管理プラットフォーム市場は、1つのIDで複数のサービスにログインできるID共通利用に向けたプラットフォームサービスのうち、B2C(B to C)とB2B2C(B to B to C)向けのサービスを対象とする。

 米国や日本の大手IT事業者が自社のアカウントで他社のサービスにログインできるようにしたことで、B2C(B to C)事業者の認知度が向上した。本人をすぐに認証でき、サービス離脱を回避できるなどの利点があるため導入する事業者が増えている。富士キメラ総研は、同市場の2022年の規模を対前年比13.3%増の17億円、2027年は対2021年比2.2倍の33億円と予想する。

eKYC市場

 eKYC市場は、法改正を受けて導入が進む金融事業者や通信キャリアなどによる継続利用によって堅調だ。オンラインサービスにおけるなりすましや転売といった不正利用を防止するため、チケット販売事業者やシェアリングサービス事業者などへの導入も進む。

 今後は、オンラインサービス事業者の導入増加やコンビニエンスストアにおける酒類提供時の年齢確認など、身元確認方法の法整備が厳密でない領域での利用に加え、金融関連での口座振替やローン審査、NFT(Non-Fungible Token)やメタバースといったCtoC領域での利用範囲が広がるとみられる。富士キメラ総研は同市場の2022年の規模を対前年比30.0%増の65億円、2027年は対2021年比2.3倍の116億円と予測する。

調査対象(出典:富士キメラ総研のプレスリリース) 調査対象(出典:富士キメラ総研のプレスリリース)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ