ノークリサーチの調査によると、今後、中堅・中小企業におけるワークフロー管理のSaaS利用は減少し、社内設置の独自開発システムの利用が増加するという。その理由は何か。また、こうしたニーズに対応するため、製品やサービスに求められる機能とは。
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ノークリサーチは2022年10月18日、中堅・中小企業における「ワークフロー/ビジネスプロセス管理製品サービス」の利用実態に関する分析結果を発表した。
ノークリサーチは中堅・中小企業における業務アプリケーションの利用実態を探るため、年商500億円未満の国内企業1300社(全業種)を対象に、10分野の業務アプリ製品やサービス(ERPや会計管理、生産管理、販売・仕入・在庫管理、給与・人事・勤怠・就業管理、ワークフロー・ビジネスプロセス管理、コラボレーション、CRM、BI、文書管理・オンラインストレージサービス)の社数シェアやニーズを調査し、分析結果を「2022年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」としてまとめた。調査の実施時期は2022年7〜8月だ。
同レポートから、ワークフロー/ビジネスプロセス管理ソリューションは業務フロー基盤の役割が重視されることでSaaS(Software as a Service)利用が減少し、社内設置の独自システムが増加することが分かった。
ノークリサーチによると、ワークフロー/ビジネスプロセス管理の製品やサービスは今後、「リアルタイムのシステム連携やノンカスタマイズでの業務フロー対応力が求められる」という。
ワークフロー/ビジネスプロセス管理の機能はユーザー企業における文化や慣習の影響を大きく受ける。日本では集団での意思決定が重んじられることから、「並行承認ルートにおけるAND条件やOR条件、多数決」をはじめとする複雑な申請、承認の機能が発展してきた。求められる機能は従業員数や組織体制によって変わるため、多種多様なワークフロー製品やサービスが存在する。
シェア上位の導入済みのワークフロー/ビジネスプロセス管理の製品やサービスは次のグラフにまとめられている。
社数シェアの上位3つはNECの「EXPLANNER/FL」、大塚商会の「eValue NS/V/Air」、エイトレッドの「X-point、Agile Works」だった。いずれも10〜20%にとどまっており、突出して高い社数シェアを占める製品やサービスは見られない。
一方、「独自開発システム」も2割弱に達している。「独自開発からパッケージへ移行する余地が残っている」とノークリサーチは分析する。
以下のグラフは、主要なワークフロー/ビジネスプロセス管理製品やサービスの運用形態について「導入済み」(青帯)と「導入予定(新規予定)」(橙帯)の回答割合を比較したものだ。
グラフ中左の選択肢の詳細は以下の通りだ。
「パッケージ」の運用状況を見ると「パッケージ」(IaaS/ホスティング利用)は導入済み(12.2%)より導入予定(7.1%)の方が5.1ポイント少ない。「パッケージ」(社内設置)と「パッケージ」(データセンタ設置)は導入予定が導入済みよりわずかに多く、それぞれ1.3ポイント、2.2ポイント増となっている。
ノークリサーチは「IaaS(Infrastructure as a Service)によるリソース変動への対応を必要とする先進的なユーザー企業の需要が一巡したことが主な要因と考えられる」と予測する。
「SaaS利用は導入済み(21.7%)より導入予定(14.8%)の方が6.9ポイント少ない。独自開発システム(社内設置)は導入済み(11.6%)より導入予定(16.0%)の方が4.4ポイント多い点にも注意が必要だ」とノークリサーチは指摘する。
近年は中堅・中小企業が手軽に導入できるSaaS形態のワークフロー/ビジネスプロセス管理製品やサービスが数多く登場し、SaaS利用の割合が高まってきた。しかし、ワークフロー/ビジネスプロセス管理は個別カスタマイズのニーズが多い業務システムでもある。そのため、ノークリサーチは「カスタマイズを必要としないユーザー企業のSaaS導入が一巡した可能性が考えられる」と指摘する。
RPAの影響などによって、ワークフロー/ビジネスプロセス管理製品やサービスには単なる申請/承認ツールだけでなく、業務フロー基盤を担う役割も求められるようになった。業務フロー基盤としての用途ではユーザー企業の個別要件が多くなりやすく、最近ではノーコード/ローコード開発ツールでワークフロー/ビジネスプロセス管理のシステムを構築するケースも出ている。ノークリサーチは「こうした点も、独自開発システム(社内設置)が今後増加する兆候が見える要因になっている」と分析する。
以下のグラフは、ワークフロー/ビジネスプロセス管理製品やサービスに求められるニーズの一部を抜粋して「導入済み」(青帯)と「導入予定(新規予定)」(橙帯)の回答割合を比較したものだ。青帯と比べて橙帯が長い項目は今後のニーズの伸びが大きいことを示す。
今後のニーズを尋ねた設問の全選択肢は以下の通りで、このうち※1〜※6の項目を上記のグラフにした。
従来のワークフロー/ビジネスプロセス管理では、日本の文化や慣習を踏まえた「複雑な申請/承認の経路への対応」(※5)が重視されてきた。しかし、上記のグラフが示すように、今後のニーズが最も大きな伸びを示しているのは「会計/販売のマスタ情報を申請/承認に利用できる」(※1)といったシステム連携に関する項目だ。
ただし、これはデータの非同期なインポートに該当する「申請/承認のマスタデータを他システムから取得できる」(※6)といった機能とは異なり、他システムのデータをリアルタイムに参照する。※1と※6は一見似ているが、ニーズの伸びに大きな差があるため、「両者を区別して捉えておくことが大切だ」とノークリサーチは指摘する。
2番目にニーズの伸びが大きい項目は「ノーコード/ローコード開発ツールで独自機能を追加できる」(※2)だ。今後のワークフロー/ビジネスプロセス管理ソリューションには、業務フローを担うビジネス基盤としての役割が求められる。従来は個別カスタマイズによって個々のユーザー企業の業務フローに合致させてきたが、昨今では※3や※4のようにセルフカスタマイズの仕組みを備えた製品やサービスも多い。
それを一歩進めた形で「ノーコード/ローコード開発ツールの併用」という手段を選ぶケースも増えると予想される。ノークリサーチは「今後は、そうした手段を視野に入れた上でリアルタイムのシステム連携やセルフカスタマイズ機能の強化を図っていくことがワークフロー/ビジネスプロセス管理製品やサービスにおける重要な機能強化ポイントの一つになる」と予測している。
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