PoWかPoSか。中央集権か非中央集権か。 BlockdaemonのCEOに聞く(2/2 ページ)

» 2022年12月01日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]
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日本のブロックチェーンマーケットの可能性

 ドイツ出身のリヒター氏は、日本のブロックチェーンの現状をドイツと比較して解説した。

 「ドイツと日本の社会システムや成熟度は非常によく似ている。これまでは『まじめに働いて老後は国が国民の面倒を見る』というのが一般的だった。一方で、このような社会システムは両国で崩壊しつつある。特に若い世代における、社会保障システムへの期待値は低い」(リヒター氏)

 このような状況の中で、同氏は日本のブロックチェーンマーケットに大きな期待を持つ。その理由は「日本企業の勤勉さやグローバルさ」「日本経済の規模の大きさ」だ。

 「日本には世界で有名なグローバル企業が多く存在する。また、米国を除いて日本の経済規模やマーケット規模は世界でも非常に注目されている。一方で企業は最低限の投資だけを実施し、それ以外の資金を『貯金』しているのも現実だ。これでは企業やマーケットが大きく飛躍することは難しい。日本のブロックチェーンマーケットは、日本の経済規模に比べると非常に小さく、ここにチャンスがあることは明白だ。どのようにユーザーを巻き込むのか。規制は現状で問題ないのか。これらが今後の課題になるだろう」(リヒター氏)

 ブロックチェーンマーケットを拡大するには、暗号資産などを保管する「ウォレット」の存在が欠かせない。この課題に対してリヒター氏は、「Web3サービスの拡大が進めば若い世代を中心にウォレットの活用が拡大する。特に『DeFi』(分散型金融)などは効果的だろう」と見解を述べた。

PoWかPoSか

 Bitcoinなどの暗号資産は、取引や送金データをブロックチェーンにつなぐための仕組みとして「PoW」(Proof of Work)を使用する。一方で、「ETH」などの暗号資産は「PoS」(Proof of Stake)を用いる。

 それぞれの違いとして、PoWはマイナーと呼ばれる人々が「マイニング」作業を通して、ブロックチェーン生成に必要な数字を見つける。この過程で多くの電気を消費する点がデメリットだ。PoSではこの電気消費の問題を解決すべく、「ステーキング」という方法を採用しており、これはブロックチェーン上に一定数以上の暗号資産保有者に対して、ブロックチェーン生成の権利を与えるという仕組みだ。電気消費は大幅に削減できるが、ステーキングすればするほど権利を得る確率が上がり、「中央集権的ではないか」と指摘される。

 リヒター氏はそれぞれの違いを説明した上で、「2つの存在は非常に重要だ。一方でどちらにも課題がある。PoWは電気消費量、PoSは中央集権的になりかねない点だ。一方でPoWが非常に効果的に働くことは、これまでのBitcoinの歴史が証明している。PoSはスマートコントラクトが正常に動き続けるという認識の下では信頼できるが、何が起こるかは分からない。今後、私たちはこれら2つの良い点を掛け合わせて、新たな仕組みを構築していく必要があるだろう」と述べた。

中央集権か非中央集権か

 非中央集権の代表として、「DAO」(自律分散型組織)の存在がある。DAOは従来の組織とは大きく異なり、参加メンバーが平等で中央集権的な組織にならないように設計されている。一方で、DAO内でのトークン保有量によって差が生まれ、「中央集権的だ」と指摘されることがある。

 「DAOをはじめとする組織のコンセプトは素晴らしい。一方で規模が大きくなっていくにつれてDAOとしてのコンセプトや機能を保持することは簡単ではない。今後、Web3というサービスが浸透していく中で、DAOになるかどうするかは企業が決められるようになる。一方で、DAOが普通になるとは思わない。全ての企業がDAOになるべきとも思わない」(リヒター氏)

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