組織の課題を解決する秘策 Microsoftのビジネスアプリケーションの全貌DX 365 Life(2/2 ページ)

» 2022年12月22日 08時00分 公開
[吉島良平ITmedia]
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Microsoft製品群でどう課題を解決するか

 「バラバラ」なデータをつなぎこむことで生じる問題の「対極」にあるのが、現在のMicrosoftのビジネスアプリケーション製品群だと筆者は考えます。ここから、主要なMicrosoftビジネスアプリケーション製品群を見ていきます。

図3 Microsoftの主要な製品群(出典:Microsoft Business Application SummitおよびMicrosoft Inspire、Microsoft Igniteの資料を基に筆者作成)

Microsoft Dynamics 365

 「Microsoft Dynamics 365」は、20種類ほどのアプリケーション群から構成されるCRMとERP機能を提供するサービスです。MicrosoftではCRMやERPという表現を使っていませんが、ここでは他製品と比較しやすいように便宜上CRMとERPと表現します。

図4 Dynamics 365 とは何か | Microsoft Dynamics 365(出典:MicrosoftのWebサイト)

CRM

 CRMには、「マーケティング」「セールス」(SFA)、「カスタマーサービス」「フィールドサービス」というアプリケーションが含まれます。

Finance、SCM(旧・Axapta/Dynamics AX)

 エンタープライズ向けに「Finance and Operations」(ファイナンス&オペレーション)というERP製品がありましたが、現在は「Finance」と「SCM」という名称になりました。

Business Central(旧・Navision/Dynamics NAV)

 SMB(中堅・中小企業)向けに「Business Central」というERP製品があります。ERP製品はそれぞれ、「Axapta」が「Dynamics AX」に、「Navision」が「Dynamics NAV」へと変わり、SaaS型であるDynamics 365としてリブランディングされました。

 この他、人事管理やプロジェクト管理などのアプリもDynamics 365の中に含まれます。幾つかのアプリに関しては、12回の連載の中で紹介します。

Power Platform

 ローコードツールとして利用者が増加している「Power Platform」には、BIツールである「Power BI」、自動化ツールとして「Power Automate」、高速にアプリを開発できる「Power Apps」、容易にbotが開発できる「Power Virtual Agents」があり、Webサイト構築ができる「Power Pages」が最近リリースされました。Power Apps、Power Automateにはそれぞれ800以上(2022年12月現在)のコネクターが存在し、Dynamics 365と連動するデータに加えて、ファイル自体を格納する「Microsoft Dataverse」というデータストアもあります。

 また、プロの開発者とユーザーがコラボレーションする「フュージョンチーム開発」で業務改善サイクルの短期化も実現しました。CRMやERPにおいて標準機能の利用が難しく、企業独自のカスタム開発になりがちな領域は、Power Platformで内製化することが一般従業員のデジタル化につながります。

Mixed Reality(複合現実)

 フィールドで業務をこなす「ファーストラインワーカー」向けには、「HoloLens」の活用による価値創造が可能です。「Remote Assist」機能を活用すると、エンジニアや修理担当者がHoloLensから現場の状況を「Microsoft Teams」で遠隔地にいる上司やスーパーバイザーに共有でき、アドバイスを得られます。

図5 Remote Assistのイメージ(出典:MicrosoftのWebサイト)

 Guides機能を活用すると、職人の技術をデータ化した映像などを通してHoloLensを装着したエンジニアなどに操作方法や対処法を伝えられます。また、データを「Dataverse」に保存し、トレーニングの成果をPower BIで可視化することも可能です。労働人口が減少している日本では、「複合現実」(Mixed Reality)の活用が職人技術の継承に重要です。

図6 Guides機能のイメージ(出典:MicrosoftのWebサイト)

 国内ではサントリートヨタなどをはじめ、さまざまな企業が活用しています。

図7 東京電力が設備保全でHoloLensを利用(出典:日本マイクロソフトのブログ記事)

AIのサポート

 MicrosoftはAIを活用したビジネスアプリケーションに注力しており、例えばCRMのMarketing、Sales、Customer Serviceアプリを活用して、顧客タッチポイントの情報を収集し、パーソナライズされた「Customer Insight」(AI機能)が売上予測やリード対応、既存顧客対応に関する洞察を提供します。

 ERPでも、AIを適正在庫数の予測や債権回収などに活用して効率的なオペレーションを支援します。Power Platformの「AI Builder」と「Power Automate Desktop」(PAD)を活用して紙媒体をデータ化し、ERP/CRM側に伝票を自動作成する運用も欧米ではよく見かける事例になってきました。

 資産保全業務においては、デバイスからデータを収集して解析し、必要なインサイトを得るAzure IoTとDynamics 365を活用することで(Connected Field Service)、装置の稼働状況を可視化します。また、故障通知などの自動化、さらには対応の順位付けをCRM側でAIに任せることも可能です。

Microsoftビジネスアプリケーションにおけるそれぞれの位置付けと今後の開発方針

 Microsoftのビジネスアプリケーションにおいて、「攻めのDX」はCRM、「守りのDX」はERP、そしてDX推進を加速させるツールは、MR、AI、Power Platformです。

 あらゆるシミュレーションを高速で行うITビジネスインフラの構築ができれば、不確実性の高い世の中でも対応方法を模索して発生し得る課題を未然に防げます。そのためにはデータを資産と捉え、意図的に生成することが必要です。

 Dynamics 365やPower PlatformのライセンスはMicrosoft 365で一元的に管理されます。SaaSはWebブラウザで動作するので、OSとデバイスに依存しない点もメリットです。

 今後、Dynamics 365とMicrosoft 365の垣根が徐々になくなっていくこともMicrosoftは発表しています。アプリケーションの切り替えはユーザーの生産性を落とすからです。オペレーションの効率を高め、「いつでも」「どこからでも」「どのデバイスでも」利用が可能な仕組みが必要です。

 できない理由を探すのは簡単です。そんなことはやめましょう。業務の効率化や企業の価値創造にどう貢献するかを一人一人が「ジブンゴト」として考え、世界で戦っていくためのIT基盤を構築しましょう。

 Microsoft 365を利用していてデータの活用がうまくいっていない企業は、まずはDynamics 365(CRM/ERP)や、Power Platform、HoloLens、Microsoft Azureなどの利用を検討してみてはいかがでしょうか? 次回はDynamics 365のERP領域について説明します。

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