“後発”Azureはナンバーワンになれるか クラウド事業トップ岡嵜氏の目算は岡嵜氏に単独インタビュー(後編)(1/2 ページ)

日本マイクロソフトでクラウド&ソリューション事業をリードする岡嵜氏に、2023年度の見通しを聞いた。

» 2023年01月05日 08時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

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岡嵜 禎氏

 ITmedia エンタープライズ編集部は、日本マイクロソフトに移った岡嵜 禎氏に単独インタビューを実施した。前編は同氏の移籍に注目して、その意図や今後のビジネス展開を中心に紹介した。後編の本稿は、岡嵜氏が見る日本企業のIT施策の課題、DX推進の障壁とその解決策について紹介する。

 アマゾン ウェブサービス ジャパンでAWSのビジネスをリードしてきた同氏が、日本マイクロソフトで今後どのようなビジネスを進めるのか。

 同氏は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する日本企業の動きはこの数年でポジティブになってきたが、課題もある」と話すが、それは一体何なのか。

岡嵜氏が指摘する「日本企業のDX課題」 必要なのは新たな組織風土?

――日本企業における"DXの遅れ"が指摘されています。その理由と日本マイクロソフトの課題解決に向けた取り組みを教えてください。

岡嵜氏: ここ数年で経営者などのマインドセットが変わり、「ビジネスモデルを変えながら積極的にDXに挑戦する取り組み」が増えています。CEO(最高経営責任者)をはじめとする経営層から「『自分ゴト』として取り組まなければ」とよく聞くようになりました。

 私は日本におけるDXの動きをポジティブに捉えています。その一方で、「文化や組織体制」には課題があると感じます。イノベーションが100発100中で成功することはありません。デジタルを活用してトライ&エラーを繰り返し、そのフィードバックを生かしてもう一度取り組むことが重要です。失敗と挑戦を繰り返す文化やマインドセットを組織の中で構築する必要があります。

 また、日本企業は"出島"のような形で小さく実証実験を行うことが良くありますが、結果的にそこだけで完結して、「本格的なDX」に乗り出さない状況が散見されます。DXの推進では、トップが企業の方向性を明確にすることが大切であり、日本マイクロソフトはこの取り組みを支援します。

 Microsoftの強みは「自らのDXに取り組んできた実績」です。これをユーザーやパートナーに共有できるのは大きな価値です。Microsoftは「Windows」などのライセンス販売を中心とした会社でしたが、現在はクラウドを中心とした会社に変わっています。同時に、組織カルチャーやマインドセットを変えて開発手法もクラウドに最適なアジャイル型へとシフトしました。チャレンジやトランスフォーメーションを自ら推進してきたことはMicrosoftの優位性です。

 「新しいことを始めるだけ」であれば新たな方法で進めばいい。しかし、多くの企業はこれまで培ってきたノウハウやカルチャーを「いかに変革するか」と考えながらDXに取り組む必要があります。そこに多くのユーザーが悩んでいます。Microsoftはその苦難を経験しているので、「どこで苦労するのか」といったポイントをフィードバックできます。

 一方で、日本企業のDXが進まない理由はもう一つあります。

――それは何ですか?

岡嵜氏: その理由は、「成功体験を積み上げられていない」ということです。大きなビジョンがあっても、その達成は険しい道のりです。達成には小さくとも成功体験を積み上げることです。「こんなことでよくなるんだ」「こういうことができるんだ」という体験を"成功体験"として捉え、そう感じる機会を増やす必要があります。

 そのためには、成功体験につながるケーパビリティを組織が持つ必要がある。そのときにカギを握るのが「内製化」です。自分たちに必要なものをクイックに作ることができたり、パートナーとのコラボレーションでやりたいことをスピーディーに実現できたりといった体制が重要です。

 一方で、今の日本企業は自分たちでそのケーパビリティを備えられないケースがほとんどです。何か新たなことを始めようとしても時間やコストを要し、人材を育てようにも育てられず、成功体験を作るための環境がありません。

 これを解決する一サービスのつが、日本マイクロソフトが提供するローコード/ノーコードツール「Microsoft Power Platform」です。システムを作り込みたい場合は「Visual Studio Code」や「GitHub」「Microsoft Azure」を活用できますし、私たちもパートナーとの連携を生かした解決策を提案できます。開発の生産性を高めることで、大きなビジョンの達成に向けた成功体験を実現します。

 成功体験の積み重ねの先には、組織にとって「デジタル技術やデジタル人材が当たり前のケーパビリティ」となる未来があります。何か新たに取り組むときに、IT技術やデジタル人材が当たり前に企業戦略に組み込まれ、あらゆる事業や部署で当たり前にDXが話される。そういう状況になると、DXを「特別なマインドセット」や「特別なスキルセット」とは捉えず、「DXでどんな価値を出すことができるのか」という意識が中心になります。日本企業が成功体験の積み重ねで到達する姿は、こうしたものになるでしょう。

Microsoft Power Platformの概要(出典:日本マイクロソフト提供資料)
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