“後発”Azureはナンバーワンになれるか クラウド事業トップ岡嵜氏の目算は：岡嵜氏に単独インタビュー（後編）（2/2 ページ）

[大河原克行，ITmedia]

Microsoftの新たな企業方針　日本企業への影響は

――Microsoftは「Do more with less （より少ないリソースでより多くのことを実現する）」というメッセージを発信しています。日本の企業はこれをどう捉えるべきでしょうか？

岡嵜氏：　社会の変化に遅れないために、組織は「スピーディーにやりたいことを実現できる環境」を構築することが重要です。しかし、ユーザーからは「DXを推進する時間がない」「投資するリソースがない」といった声を聞きます。これらを解決には、短期間かつ少ないリソースでやりたいことを達成できる仕組みを提供することが大切です。

　Microsoftのクラウドはユーザーのニーズを満たす幅広いソリューションを持っています。少ない労力で業務を効率化でき、本当のイノベーションを推進します。

　一方で製品の強みや使い方の理解が進んでいないのも事実です。日本マイクロソフトはDXを推進する際、「いかに少ないリソースで効率的に物事を進めるか」を重視しています。そのためにはITを活用して企業が求めるビジネスソリューションを作り、ビジネスプロセスの変革で作業効率をあげる必要があります。

　ビジネスにおいてDo more with lessの実現レベルを高めれば、課題が発生してもテクノロジーを組み合わせてスピーディーな対応や瞬間的な判断、意思決定が可能になります。

　時間やITリソースだけでなく、業務そのものもDo more with lessにする。クラウド活用で運用にかかる人員を10人減らし、これらの人員を本質的なイノベーションに回せるようにすることもDo more with lessの一つの形です。

　この言葉は私自身が日本マイクロソフトに入社したタイミングで使われ始めたものでもあるので、個人的に思い入れがあります（笑）。

Do more with lessの概要（出典：日本マイクロソフト提供資料）

――日本マイクロソフトは2023年1月から2023年度の下期に入ります。クラウド＆ソリューション事業本部としてどんな事に取り組みますか？

岡嵜氏：　クラウド＆ソリューション事業本部には、Microsoft Cloudのセキュリティ、インフラストラクチャ、デジタル＆Appイノベーション、データ＆AI、モダンワーク、ビジネスアプリケーションの6つの領域のエキスパートが在籍しており、それぞれの人材がユーザーの課題に応えることが活動のベースです。

　モダンワークの領域においては、多くのハイブリッドワークなどの働き方改革に取り組む企業のサポートをします。日本マイクロソフトはデバイス導入だけでなく、「デバイスからクラウドに至るまでのセキュリティ」や「社員が安心して働く環境の構築」などもサポートします。

　クラウドマイグレーションであれば、「データやAI（人工知能）の活用」や「生産性やリソースの効率性をあげるには」といったことも提案します。アプリケーション開発では、GitHubや各種開発ツールの活用に加え、パートナーと連携したアプリケーション開発のモダン化を推進します。

　日本マイクロソフトの特徴はそれぞれの専門分野の取り組みだけではありません。それらを組み合わせて、「トータルソリューション」として提供する点が重要な特徴です。ユーザーの課題に対してソリューションを組み合わせて提案を行い、時にはワークショップの開催や「Microsoft Technology Center」（注1）を活用することで、より確実にユーザーのDX推進を支援します。

　パートナーとの連携も重要なポイントです。2023年はRed HatやSAPをはじめとしたISV（独立系ソフトウェアベンダー）パートナーやユーザーを支えるSIer（システムインテグレーター）との連携をさらに強化します。グローバルに見ても日本のSIerは優秀です。彼らとの強固な関係性を生かして相互が持つノウハウを連携させ、より踏み込んだ形でユーザーを支援します。

　それぞれのユーザーに合った価値提供を行い、「Microsoftのソリューションの価値が理解できた」や「Microsoftのソリューションを使ってよかった」といった声をいただける組織を目指します。

　Microsoftのカルチャー変革の大きな要素の一つに、「ユーザーを中心にユーザーと向き合い、ユーザーに価値提供をする」が掲げられています。日本マイクロソフトにはこの要素を加速できる余地があります。パートナーと協力しながらこの方針を推進する1年にしたいです。

――日本でナンバーワンのクラウドベンダーを目指しますか？

岡嵜氏：　「何をもってクラウドなのか」「何をもってナンバーワンなのか」という議論はあるでしょうが、Microsoftのクラウドは、さまざまな製品ポートフォリオに加えて、パートナーとの連携で生まれるトータルソリューションが強みです。ユーザーにその価値を提供するトータルクラウドソリューションベンダーとして、一番になりたいと思います。

注1　Microsoft製品およびテクノロジーを基盤としたITソリューションのデモンストレーション、ソリューション体験、導入前システム検証など、エンタープライズ企業のIT導入をサポートする場所